2013 Fiscal Year Annual Research Report
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12J02130
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
中村 亜希子 独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 瓦当 / 三次元計測 / 渤海 / 三彩 |
Research Abstract |
2年度目の研究計画は、①日本におけるデータ収集・分析、②西古城と八連城出土瓦の分析、③絵画資料や現存する建造物からの道具瓦の用途検討を予定していた。しかし、昨年度から引き続き日中間の国際情勢が悪く渤海資料の現地でのデータ収集が困難な状況であったため、国内で実施できる①と、3年度目に予定していた④釉薬や胎土の化学分析の準備を行った。 日本におけるデータ収集・分析では、東京大学が収蔵する渤海瓦のデータ収集に重点を置いた。具体的には田村晃一の諸研究によって分類された資料のうち、型式の基準資料とし得る程度残存する瓦を選別し、出土数が豊富で個体の製作技法などを比較検討ができるものを7分類に大別した。さらに、その中で写真・拓本の検討から范の最低数量を推測し、三次元計測後のデータ処理に備え予察を行った。そして、選別した資料、及び発掘当時の注記が残り出土地点が確かなもの全点について、瓦当の三次元計測を行った。なお、今回の計測は范の同定を目的としたため、瓦当表面のみを計測し、効率化をはかった。計測を行った資料数は破片も含めて300点余りである。また、これらの計測データから、范の傷の進行具合によって新旧関係が確認できるものを選別し、出土地点を分析した。分析はまだ途中であるが、出土地点によって范傷の有無・進行具合に顕著な違いが認められる型式が存在することが判明している。 釉薬や胎土の化学分析の準備では、分析に先んじて、渤海三彩の研究に関する先行研究をまとめ、傾向の把握と予察をおこなった。その上で、東京大学が保管する渤海遺跡出土の三彩資料の器種と胎土の関係を考察し、化学分析を行う資料の選定を行った。資料の制約からその大半が建築部材となり、土器の分析はごく少数に限られることとなるが、建築部材の中でも白色胎土で化粧土を施さないものと、粗い赤色胎土で釉薬の色調が濃く化粧土を厚く施すものとに大別できるため、化学分析の結果が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度に続き日中間の情勢が不安定であり、中国での三次元計測など綿密な調査を行うことはかなわなかった。しかしながらその分、国内での資料調査・データ収集を量的・質的に充実させることができたため、研究全体としてはおおむね順調に研究が進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、第一に、本年度に収集したデータの分析・研究成果を発表することから始める。そして、問題点をまとめた渤海の三彩資料に関して、実際に化学分析を行う。また、日中間の政治的情勢が安定に向かい、中国での渤海遺物の資料調査が可能となれば、2年度目に予定していた資料調査も行いたい。
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Research Products
(2 results)