2012 Fiscal Year Annual Research Report
大戦間期フランス知識人の共和国改革を巡る議論とジャン・ジロドゥの演劇の関係性
Project/Area Number |
12J02209
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田ノ口 誠悟 早稲田大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ジャン・ジロドゥ / 演劇 / 大戦間期 / 知識人 / 文化社会学 / フランス |
Research Abstract |
本年度は、以下の二つの研究を行った。 研究目的:ジロドゥの演劇理論を包括的に概観した上でその劇場の公共性を巡る理論を明るみに出し、なおかつジロドゥ演劇の演出、受容の特徴を探る。 (1)ジャン・ジロドゥの「共和国のための政治演劇」構想の研究:まず、ジロドゥの全てで八編ある演劇論を読み込み、そこに見られる「第三共和制の政治に資する演劇像」を、その理論的レベルからその具体的レベルまで明らかにした。そして「人民演劇論」論を初めとする政治演劇を巡る当時の知的トピックに関する研究を参照し、当時の演劇と政治に関する言説の状況を概観し、その中におけるジロドゥの理論の位置づけを行った。 (2)戯曲の上演、受容のありようの研究:ジロドゥ作品の専門家の多くが文学者であったこともあり、その戯曲の演出の研究は、行われない傾向にあった。受容言説、即ち劇評に関しては、戯曲の「先行研究」として一部参照されていたものの、包括的に扱った研究はなかった。我々は、ジロドゥ戯曲の中で最もその演出、受容資料が残っている、当時の独仏関係をテーマとした『ジークフリート』(初演1928年)の演出、受容を研究し、戯曲が孕む同時代独仏関係に関する意見がどのように舞台に乗せられ、どのように受け取られたかを探った。 (1)はジロドゥという劇作家の政治性を明らかにするために必要な理論的な手続きであった。また、ジロドゥと同時代の知識人達の国家思想の関係を明らかにするためにも重要な研究であった。(2)は公的問題を孕むジロドゥ戯曲が当時の政治的世論に上演を通じてどのような影響を与えたかを考えるための基礎的研究であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は二つの学会論文を投稿した上で受理され、また一つの全国学会発表を行った。これは文学研究の領域においては極めて多大な業績である。またこのような形に残るもののみならず、パリ国立図書館においてのジロドゥを巡る資料集めも順調に進んでいる。学会においても、発表や論文が極めて意義深くクオリティの高いものとして様々な専門家から賞賛を得ている。努力の成果が予想以上の評価を得ていることを感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、フランスの演劇史学会に論文を投稿し、この五月には、ジロドゥ国際学会で研究発表を行う予定である。フランス語での、国際的なレベルでのアウトプットが中心になる。このためには、留学先のパリにて、より一層の語学力向上のための努力をしなければならない。また、パリ国立図書館で調査する予定の資料が、まだ相当数残っている。これらの調査に関しても、腰を据えてやらなければならない。 また去年研究を続ける中で、大戦間期の演劇空間に関する膨大な研究所を収集、読解する必要があることが分かってきた。これらの研究に関しても集中的に行いたいと思う。
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Research Products
(2 results)