2012 Fiscal Year Annual Research Report
連鎖球菌による宿主細胞表層多糖の認識及び分解機構の解明とその感染症治療への応用
Project/Area Number |
12J02291
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中道 優介 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | グリコサミノグリカン / リアーゼ / ヒドロラーゼ / X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
グリコサミノグリカン(GAG)には、1,3グリコシド結合を有するヒアルロン酸やコンドロイチンと1,4グリコシド結合のヘパリンやヘパラン硫酸が存在する。本年度は、細菌における1,4結合のGAGの認識と分解に関わる分子機構の解明に焦点を当て、ヘパラン硫酸リアーゼの遺伝的特性並びに不飽和ヘパリン二糖へ特異性を示すUGLの酵素学的特性と立体構造を解析した。 [1]UGL遺伝子クラスターにおけるヘパラン硫酸リアーゼ 連鎖球菌のゲノムには、不飽和グルクロニルヒドロラーゼ(UGL)遺伝子を中心として、1,3結合をもつGAGの分解並びに宿主への感染に関わる遺伝子クラスター(UGL遺伝子クラスター)が含まれる。連鎖球菌などの病原性細菌や腸内細菌といったヒト関連細菌において、UGL遺伝子クラスターの下流にHepC(ヘパラン硫酸リアーゼホモログ)がコードされていることが分かった。組換え酵素の解析から、乳酸菌HepCは1,4結合のヘパラン硫酸に顕著な活性を示し、ヘパリンにも作用することが分かった。このことから、UGL遺伝子クラスターは、1,4結合のGAGの分解にも寄与することが明らかになった。 [2]UGLの機能と構造 ヘパリン分解細菌に由来する3種類のUGLを組換え大腸菌にて発現し、それらの酵素学的特性を解析したところ、それぞれ異なる基質を認識することが分かった。UGLにおける不飽和ヘパリン二糖の認識機構を解明するため、不飽和ヘパリン二糖に特異性を示すUGLの結晶構造を決定した。 [3]ヘパリン/ヘパラン硫酸結合タンパク質の探索 ヘパリンをリガンドとしたカラムを用いて、連鎖球菌の細胞表層画分からヘパリン/ヘパラン硫酸に親和性を示す候補タンパク質の取得を試みている。 ヘパリンやヘパラン硫酸は、哺乳類を始めとする種々の動物の細胞外マトリックスに含まれるため、本研究成果は感染や共生などの細菌と宿主との相互作用機序の解明につながることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
細菌の病原性におけるUGLの重要性が明らかにされたため、UGLの不飽和ヘパリン二糖認識についての研究を開始した。本年度は、ヘパリン分解細菌に由来するUGLの特性や、不飽和ヘパリン二糖へ特異性を示すUGLの立体構造を明らかにするなど、研究の進度に問題は全く無い。 当初の研究の目的については、乳酸菌のヘパラン硫酸リアーゼホモログの性質を決定し、UGL遺伝子クラスターが1,4結合の基質の分解に寄与することを明らかにするなど、概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
[1]ヘパラン硫酸リアーゼホモログ(HepC)の立体構造を決定する。また、HepCとヘパラン硫酸オリゴ糖との複合体構造を明らかにし、ヘパラン硫酸分解機構を解析する。 [2]不飽和ヘパリン二糖に対して特異的に作用するUGLについて、より高分解能の回折データを与える結晶の作製並びに基質との複合体構造の決定を行い、UGLによる不飽和ヘパリン二糖認識機構を明らかにする。 [3]連鎖球菌におけるヘパリン結合タンパク質を膜画分より単離する。それらのタンパク質をコードする遺伝子を同定し、ヘパリン結合能を解析する。さらに、該当遺伝子破壊株を作製し、グリコサミノグリカン産生細胞(CHO細胞)への結合能を評価する。
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Research Products
(5 results)