2012 Fiscal Year Annual Research Report
核局在卵菌綱植物病原菌エフェクターの罹病性誘導機構および病害抵抗性抑制機構の解明
Project/Area Number |
12J02337
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
浅井 秀太 独立行政法人理化学研究所, 植物免疫研究グループ, 特別研究員(SPD)
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Keywords | エフェクター / サリチル酸 / ジャスモン酸 / べと病菌 |
Research Abstract |
植物と病原菌は、自身の存続をかけた攻防により共進化してきた。その中で、植物はより強固で複雑な病害抵抗性のシステムを獲得してきた。一方、植物病原菌は"エフェクター"と呼ばれるタンパク質を植物細胞内に注入し抵抗反応を抑制することで、感染を成立させている。つまりエフェクターの機能および標的を明らかにすることにより病害抵抗性に関わる重要な因子の同定が期待される。 これまでに卵菌であるべと病菌(Hyaloperonospora arabidopsldis ; Hpa)において植物の抵抗反応を抑制しうる推定のエフェクターが多数同定されており、その内宿主植物細胞内において核に局在する5つのエフェクターに注目した。これらエフェクターの過剰発現シロイヌナズナを用いたRNAシークエンスによる網羅的なトランスクリプトーム解析を行った結果、エリシター処理後早期に発現変動を示した遺伝子の内98%の遺伝子発現に優位な差は観察されなかった。そこで、Hpaへの抵抗性に重要であるサリチル酸処理後の遺伝子発現変動について調べたところ2つのエフェクターの高発現株においてサリチル酸応答遺伝子であるPR・1遺伝子の発現が優位に低下した。現在、これらエフェクターの宿主植物細胞内での標的たんぱく質を上記の過剰発現株を用いたアフィニティ精製および質量分析法により同定している。 Hpa接種時の宿主植物の応答を調べる目的で非病原性株Emoy2および病原性株Waco9を接種したシロイヌナズナ(Co1-0)においてトランスクリプトーム解析を行った。Emoy2接種後に発現誘導を示した遺伝子にはサリチル酸応答遺伝子が多数含まれていた。その一方、Waco9接種3日後ではジャスモン酸応答遺伝子が多数含まれていた。病害抵抗性においてジャスモン酸はサリチル酸と拮抗的に働くことが知られている事から、Waco9接種3日後に発現しているエフェクターの中にジャスモン酸経路の活性化に関わるエフェクターが含まれている可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初一年目にあたる本年は5つの核局在Hpaエフェクターの過剰発現シロイヌナズナを用いたトランスクリプトーム解析を計画していたが、それらに加えHpa感染時のトランスクリプトーム解析が行われエフェクターの推定標的シグナル経路を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
エフェクターの宿主植物細胞内での相互作用たんぱく質を同定後、その欠損変異株および過剰発現株を作製し抵抗反応および病害抵抗性の評価を行う。 同時にトランスクリプトーム解析を行う事によりエフェクターの病害抵抗性抑制機構を解明する。
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Research Products
(6 results)