2012 Fiscal Year Annual Research Report
特発性大腿骨頭壊死症に対する動物モデル及び疫学調査を用いた病態解析
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12J02339
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山口 亮介 九州大学, 大学院・医学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 大腿骨頭壊死症 / 一過性大腿骨頭委縮症 / ステロイド性骨壊死 |
Research Abstract |
特発性大腿骨頭壊死症および類似する疾患に関して、動物モデルおよび疫学的手法を用いて、基礎的、臨床的研究を行った。 基礎的研究として、ステロイド性家兎モデルでは成熟度がステロイド性骨壊死発生率に影響を及ぼすことを動物実験によって確認した。未成熟家兎は成熟家兎と比較して骨壊死発生率が有意に低く、その関連要因としてステロイド代謝酵素であるCYP3A発現量が異なること、血管拡張因子であるNO産生量が異なることを確認した。これらの結果は、臨床的に小児ではステロイド性骨壊死発生が稀である知見の基礎的裏付けとなる重要な結果であると考えられた。 臨床的研究として、難治性疾患克服研究事業における臨床調査個人票を用いて、日本の一般人口における特発性大腿骨頭壊死症の発生率が年間人口10万人あたり2.51人であることを報告した。一般人口における本症の発生率は世界的にも初めての報告であり、今後本症の重要な疫学的指標になると考えられた。また、同手法を用いて本症の詳細な疫学的指標(誘因、病期、病型、手術法等)について検討を行った結果を報告した。 さらに二次性変形性股関節症を来たす疾患として、特発性大腿骨頭壊死症、急速破壊型股関節症、発育性臼蓋形成不全に注目し、股関節液を用いて骨代謝および軟骨代謝マーカーを比較検討した。両代謝マーカーとも有意に異なっており、疾患の病態や進行過程の違いを示唆する結果であると考えられ、世界的に稀な重要な報告であると考えられた。 また大腿骨頭壊死症に類似する疾患である一過性大腿骨頭萎縮症について股関節形態の特徴を評価した。本症患者では臼蓋後捻、大腿骨頭頚部前方隆起の指標が高頻度に認められ、病変部位は臼蓋縁に接する軟骨下領域に限局していた。これらの結果から本症では骨頭臼蓋縁間のメカニカルストレスの増加が発生病態に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特発性大腿骨頭壊死症および類似する疾患について、研究課題に沿って動物モデルおよび疫学的手法を用いて、基礎的、臨床的研究を遂行している。基礎的には動物モデルを用いて臨床的知見の基礎的裏付けを行い、臨床的には特発性大腿骨頭壊死症の疫学的指標の報告ならびに記述疫学調査を行った。また二次性変形性股関節症を引き起こす股関節疾患の関節液を用いて骨代謝および軟骨代謝について比較検討を行い、さらに類似する疾患である一過性大腿骨頭萎縮症についての画像学的評価を行った。結果は国際学会ならびに国内学会で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
特発性大腿骨頭壊死症および類似する疾患について、引き続き動物モテル、疫学的手法、臨床サンプルを用いて、基礎的、臨床的研究を遂行する予定である。ステロイド性骨壊死はステロイドの多様な作用によって生じる多因子疾患であると推測されているが、近年ステロイド性骨壊死家兎モデルを用いた動物実験において血管攣縮(Vasospasm)の関与が報告されている。本研究では造影CTを用いることで同モデルの血行動態評価を行い、さらにステロイド投与後の血管攣縮の可能性を評価している。今後同手法で血管攣縮について経時的な評価を行う予定である。また臨床調査個人票を用いた全国的な特発性大腿骨頭壊死症の経年的な記述疫学調査結果をまとめる。近年一過性大腿骨頭萎縮症および急速破壊型股関節症の発生病態への関与が報告されている大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折について形態学的解析を行い、疾患発生あるいは予後に関与する因子について検討を行う。
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Research Products
(22 results)