2012 Fiscal Year Annual Research Report
芸能の伝播と受容に関する民俗学的研究 -北部九州の俄を事例として-
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12J02349
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松岡 薫 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 俄 / 芸能 / 伝承 / 民俗学 / 造り物 / 俄師 |
Research Abstract |
本年度は、熊本県阿蘇郡高森町の風鎮祭、長崎県南松浦郡新上五島町有川郷の十七日祭りで演じられる俄を当該地域にそれぞれ2週間程滞在しながら、当該地域のなかでいかに演じられ、祭りのなかで付与されている役割について調査を行った。 演じられる演目や演技方法に着目するだけでなく、演技者である青年たちと地域社会の関係にも注目し、当該地域においてなぜ現在でも伝承されているのか明らかにするため、調査を行った。その結果、高森町では「向上会」と呼ばれる青年たちが祭礼のなかで俄を演じることが重要なのであり、そのことが現在まで俄が演じられ続けている要因であることがわかった。 また、熊本県上益城町山都町馬見原、長崎県西彼杵郡長与町西高田、愛媛県今治市朝倉、大阪府南河内郡千早赤阪村で伝承されている俄について、観察調査及び聞き書きを行った。これらの俄は、高森町、有川郷の俄とも異なり、造り物を「俄」と呼ぶもの、人形を伴うものなど演じ方が異なる事例や、獅子舞のなかで演じられるもの、御輿の上で演じられるものなど演じる場が異なる事例で、全国に分布する俄の形態を調査し分類することによって、「俄」と称される芸能とは一体何なのか、定義することが可能だと考える。 そのほか、福岡県福岡市の博多仁和加振興会が所蔵する博多俄師に関する資料や俄本、新聞資料等などの資料収集を行い、民俗芸能研究の枠に収まらず、当時のメディアや芸能を取り巻く状況も鑑みながら調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた調査地でのフィールドワークは全て行え、調査データについても順調に収集できた。今後は収集したデータの分析と、次年度以降のフィールドワークの計画を練っていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
熊本県高森町で明らかになった、演技者と地域社会との関係が芸能伝承に与えることについて、より一般化を進め、長崎県新上五島町など他地域においても当てはまるのか検討したい。 また、俄の興行化、専業俄師の登場、マスメディアとの関係など、民俗芸能の枠に囚われずに検討していくことが重要だと考えられる。今後はそのような時代状況も踏まえつつ、伝承母体における芸能受容について概念化し、芸能伝承のプロセスにどのように寄与しているか、新たな芸能伝承論を提示したい。
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Research Products
(3 results)