2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J02394
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
髙原 豪 大阪大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 診療報酬制度 / 診療拒否 / 非対称情報 / 逆選択 / 病院間競争 / 利他性 / 医薬品市場 / 広告規制 |
Research Abstract |
本年度は主に3点の研究を行った。 1点目として、情報の非対称性が存在する下での最適な診療報酬制度について理論的に分析を行った。この研究によって、重症患者に対する診療拒否に伴う費用(治療の遅れ、病院間の移動費用など)が小さい場合は、医療機関にこの重症患者を診療拒否させる診療報酬体系の方が、重症患者の治療にかかる追加的な支払いを行う診療報酬体系よりも効率的であるということを示した。この結果は、強い政策的インプリケーションを持っている。現在、日本で導入されている診療報酬体系では、原則的に全ての疾病において治療にかかる費用を保険者(医療保険運営者)は支払う制度となっている。しかし、この分析結果によれば、疾病によって差別的な診療報酬の支払い制度を導入することによって、この制度の効率性が改善することが見込まれる。 2点目として、利他的な医療機関(金銭的な利潤だけでなく、患者の利益が効用に加わっている医療機関)が、治療の質について競争を行っている状況下での最適な診療報酬体系について分析を行った。このような効用関数をもっ医療機関の仮定をおいた分析は、いくつか先行研究が見られるが、私は、この利他性が医療機関の間で異なるとき、より利他的な病院ほど治療の質を下げる可能性があるということを理論的に示した。 3点目として、医療用医薬品の広告規制に関する理論分析を行った。日本では、製薬メーカーによる医療用医薬品の広告が規制されているが、米国においては、一定の規制があるものの日本と比較すると多くの広告が許容されている。そこで、医療機関を軸とする競争の下での最適な広告規制について理論分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた研究計画と、実際の研究実績がほぼ一致しているため、おおむね順調に研究が進展しているものと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
先に述べた3点の研究を更に発展させる。第1研究については、ディスカッションペーパーを通じて研究成果を公開する。第2研究については、理論モデルを更に発展させ、平成25年9月をめどに研究成果を公開する。第3研究については、平成25年9月をめどに基本モデルを完成させ、平成26年9月をめどに研究成果を公開する。
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