2012 Fiscal Year Annual Research Report
質量数100以下の原子核による速い陽子捕獲過程の系統的記述
Project/Area Number |
12J02396
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福井 徳朗 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1) (40757118)
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Keywords | 元素の起源 / rp-process / 間接決定 / 分解反応 |
Research Abstract |
元素の起源を探ることは原子核物理学の最重要課題の1つであり、元素合成過程の理解は物質生成メカニズムの解明にとって重要である。元素合成過程には、超新星爆発時等に原子核が陽子(p)を捕獲し、陽子過剰な不安定核を経由して急速に重い原子核がつくられるrp-processという過程が存在する。rp-processの中でも、質量数8以上の原子核を形成するための重要な反応としてp+8B→9C+γ(γ:光子)という反応(以下、p-8B融合反応)が注目されている。このp-8B融合反応は低エネルギーの反応であり、実験によって直接再現することは困難である。そこで代替反応として9C+208Pb→p+8B+208Pb,および9C+A→8B+X(A:標的核、X:測定しない、つまり包括的な反応であることを示す)という2種類の9C分解反応が提案されている。本研究では2種類の9C分解反応の理論解析から、p-8B融合反応率を決定することを試みた。 計算には、反応模型として連続状態離散化チャネル結合法(CDCC)を用いた。CDCCは9Cの基底状態および共鳴状態をも含む連続状態を同一の枠組みで精密かつ簡便に取り扱うことが可能な反応模型である。CDCCを用いて分解反応を記述する際、これまでは排他的な断面積(つまり終状態の粒子をすべて測定する反応の断面積)のみしか計算できず、上述の包括的断面積の記述が不可能であった。そこで近年CDCCの枠組みを包括的断面積の計算が可能な枠組みまで拡張されたEikonal反応理論(Eikonal Reaction Theory ; ERT)という新理論が展開された。本研究では、このERTを天体核反応率決定のために応用した世界初の研究である。 上記の理論的な解析により、2種類の分解反応に関して整合する、p-8B融合反応率を表す天体核物理因子S18を66+/-10eVbと決定した。また、本研究で解析した2種類の分解反応はそれぞれ、以前異なる研究者によって実験・解析された反応であった。今回我々は先行研究と本研究によって導出された天体核物理因子の差異について詳細な分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、「9.研究実績の概要」で述べた、解析した対象の分解反応のうち、排他的な分解反応のみを研究対象としていた。しかし、包括的な分解反応においても同様な分析が可能であることに着目し、当初予定していたよりもより詳細で精密に天体核物理因子を決定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は分解反応のみに注目するのではなく、異なる様々な反応を解析し、そこから速い陽子捕獲過程の記述を試みる。具体的には核子移行反応の解析から、速い陽子捕獲過程に寄与する不安定核および非束縛核の構造について研究することを目標としている。
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Research Products
(8 results)