2012 Fiscal Year Annual Research Report
ハーフメタル強磁性体/半導体へテロ構造を用いたスピン機能デバイスの創出
Project/Area Number |
12J02400
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
秋保 貴史 北海道大学, 大学院・情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ホイスラー合金 / スピントランジスタ / 半導体へのスピン注入 / 超微細相互作用 |
Research Abstract |
スピンを用いた演算機能や通信機能の実現を可能にするスピントランジスタの開発が重要である。スピントランジスタを実現するためには、(1)強磁性体ソースから半導体に高効率にスピンを注入し、(2)チャネル中でスピンを保持したまま輸送し、もしくは、スピン方向を操作し、(3)強磁性体ドレインでスピン状態を高効率に検出する、ことが必要になる。しかしながら、現状では、高効率なスピン注入と検出が達成されておらず、また、半導体中のスピン輸送特性も十分明かになっておらず、スピントランジスタの動作実証には至っていない。 以上のことより、平成24年度の研究計画は強磁性体であるホイスラー合金/半導体ヘテロ接合を有するスピン注入デバイスを作製し、(A)高効率スピン注入・検出の実現、および(B)半導体におけるスピン輸送特性の解明について計画を進めることを目的とした。具体的には、(A)に対して、潜在的に高いスピン偏極率を有するホイスラー合金を用いたホイスラー合金/GaAスピン注入デバイスを用いて、GaAsへのスピン注入・輸送・検出を初めて実証した。さらに、参照用試料としたCoFe/GaAsスピン注入デバイスとの比較から、ホイスラー合金の高いスピン偏極率に由来する、高いスピン注入効率を示し、ホイスラー合金がスピン注入にとって有望であることを初めて実証した。(B)に対しては、GaAsに注入した電子スピンはGaAs核スピンとの超微細相互作用によって、GaAsを伝導中にその影響を受ける。我々はこの超微細相互作用をホイスラー合金/GaAsスピンデバイスを用いて電気的に検出することに成功し、核スピン影響下における電子スピンの輸送特性を明らかにした。強磁性体/GaAsスピン注入デバイスを用いて、超微細相互作用を検出した報告例は、世界中でも3件程度しかなく、これらの結果は現在学術雑誌(Physical Review B)に投稿中である。また、電子スピン・核スピン相互作用を有効に活用することで、従来よりも多角的に強磁性体/半導体スピンデバイスを評価できるため、核スピンを直接的に操作することができる、NMR測定系の準備を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上に述べたように、強磁性体/半導体ヘテロ接合を用いたスピン注入・輸送・検出特性を明らかにすること、はスピントランジスタ実現への必須条件である。平成24年度において、ホイスラー合金を用いてスピン注入・輸送・検出を実証するとともに、その潜在的に高いスピン偏極率に由来する高効率な注入・検出特性絵を得ることが出来た。また、電子スピン・核スピン相互作用がスピン輸送特性に影響することを明らかにすることが出来た
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究計画は、これまでに、ホイスラー合金を用いたことで高効率なスピン注入を実証したが、(1)作製条件、層構造などを変えることで、更なる高効率化を図ること。(2)スピン注入・輸送・検出特性を別の角度から観察し、その特性をより詳細に明らかにするためNMR測定技術の確立を行う。(3)半導体材料が従来はGaAsだったのに対し、Si、InGaAsなど他の材料系での検討を行い、スピントランジスタに最適な半導体材料を探索する。 以上(1)~(3)について研究を進めていく予定である。
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Research Products
(6 results)