2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J02402
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鈴木 卓 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | CES造耐震壁 / 繊維補強コンクリート / せん断スパン比 / 偏心壁 / FEM解析 |
Research Abstract |
本研究では、施工性の改善と要求される耐震性能を満たしうるCES(Concrete Encased Stcel)造耐震壁の開発を主たる目的としている。 申請者はCES造耐震壁の静的載荷実験を継続的に行ってきた。その結果、壁縦筋の定着の違いおよび壁板の偏心に拘らずCES造耐震壁の耐力性能は同等であることを明らかにした。また、変形性能に関しては、壁縦筋の定着を省略することで向上し、壁板の偏心に伴い低下する傾向が見られた。 本年度の研究目的は壁板が柱に偏心して取り付くCES造耐震壁の応力伝達メカニズムについての検討である。CES造耐震壁は側柱と梁に内蔵鉄骨を有することから壁板とフレーム部の鉄筋による定着を省略したとしても壁板を十分に拘束し、せん断力に対して粘り強く抵抗、高い耐力性能および変形性能が得られる。しかしながら、壁板が柱に偏心して取り付いたCES造耐震壁では、壁心位置が柱心位置とずれることとなり、偏心壁試験体は無偏心壁試験体と比べて変形性能の低下が認められた。 そこで、本年度は前述した壁板が柱に偏心して取り付いたCES造耐震壁と対象として3次元FEM解析を実施し、偏心壁試験体の応力伝達メカニズムについての検討を行った。解析結果は実験結果と概ね一致する傾向が認められた。一方,内部応力状態に着目すると,偏心壁試験体では圧縮側柱の負担せん断力は無偏心壁配置のものと比べて小さく,壁板から圧縮側柱脚部にかけてのせん断力伝達性能の低下する傾向が認められ,偏心壁配置の耐震壁のせん断伝達メカニズムは無偏心壁配置の耐震壁と異なることが確認された。また,壁板が偏心配置されているCES造耐震壁でも,側柱中心位置が壁板厚の範囲にある場合では,圧縮側柱の負担せん断力は偏心壁配置のものと比べて大きく,無偏心壁配置の耐震壁と同程度のせん断力伝達性能を有することが認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画は無偏心壁および偏心壁CES造耐震壁の内部応力状態について検討を行うことである。これについては,三次元FEM解析を実施し,無偏心壁試験体および偏心壁試験体の内部応力状態を考察し,CES造耐震壁のせん断伝達メカニズムを明らかにした。また、目標であった「日本建築学会構造系論文集」への投稿も終了することができ,申請者の研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
CES構造は従来にない新しい構造形式であることから,現在,日本建築学会で検討されている「CES造建物の性能評価型構造設計指針(仮称)」では,静的増分解析を用いた限界耐力計算が採用される予定である。静的増分解析および時刻歴応答解析に用いる耐震壁の解析モデルについては,両側柱と壁板をそれぞれ線材に置換するTVLEモデル(Three Vertical Line Elementsmodel)が代表的である。CES造耐震壁においても各部材の復元力モデルを適切に与えることができれば,TVLEモデルは静的増分解析に有効なものとなる。 そこで次年度は,CES構造の構造性能評価法の開発に資する基礎資料の整備を目的として,CES造耐震壁に関する実験データを対象にTVLEモデルによる静的増分解析を行い,モデル化の妥当性についての検討を行う。
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Research Products
(11 results)