2012 Fiscal Year Annual Research Report
睡眠時の嗅皮質からのトップダウン入力による嗅球新生顆粒細胞の除去の機能的意義
Project/Area Number |
12J02405
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
駒野 清香 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 嗅覚 / 睡眠 / 嗅皮質 / 嗅球 / 成体ニューロン新生 / 電気生理学 |
Research Abstract |
研究課題について、本年度は「覚醒時の匂い経験により大きく促進される食後睡眠時の嗅球穎粒細胞の除去に、休息・睡眠時の嗅皮質からのトップダウン入力が関与しているか」についての検討を行った。 マウスの鼻腔を閉塞して嗅覚入力の遮断を行うと、食後睡眠時に除去される嗅球穎粒細胞の数が大幅に増加し、また、除去のタイミングが早まることがわかっている(Yokoyama et al., 2011)。私は、食後睡眠時に促進される嗅球新生穎粒細胞の除去に、嗅皮質からのトップダウン入力が重要な役割を果たすことを見出している。覚醒経験時(例;食餌経験時)の嗅覚入力の有無が、その後の休息・睡眠時に嗅皮質からのトップダウン入力により促進する嗅球新生穎粒細胞の除去にどのような影響を与えるのかを調べることは、研究課題である「睡眠時の嗅皮質からのトップダウン入力による嗅球新生穎粒細胞の除去の機能的意義」に迫る上で重要であると考え、これを検討した。 マウス嗅球、嗅皮質に金属電極を、嗅皮質にカニューレを留置する手術を行い1週間の回復期間をおいた後、鼻腔にプラグを挿入し、嗅覚入力の遮断を行った。このマウスに1日4時間のみ餌を与える摂食制限を行った。この操作により、マウスは特定の時間に餌を食べて、その後、睡眠を取るようになる。摂食制限10日目に、(1)食餌開始1時間後に嗅皮質へGABAA受容体アゴニストのムシモールを投与し嗅皮質の活動を抑制する群、(2)食餌開始直前に嗅皮質ヘムシモールを投与する群、を作製した。そして、それぞれの群について、食餌時間の睡眠時の嗅皮質から嗅球へのトップダウン入力の頻度と、嗅球でアポトーシスを起こしている穎粒細胞数について調べた。結果、睡眠時の嗅皮質から嗅球へのトップダウン入力の頻度は、(1)(2)群とも対照群と比較して減少しており、嗅皮質へのムシモール投与により嗅球へのトップダウン入力が抑制されることが示された。アポトーシスを起こしている嗅球穎粒細胞数について、(1)群では対照群と同程度であったが、(2)群では対照群の半分程度に減少していた。このことから、嗅覚入力の遮断による、食後睡眠時の嗅球穎粒細胞の除去の大幅な増加と除去のタイミングの前倒しに、食餌の早い時間からの嗅皮質から嗅球へのトップダウン入力が重要な役割を果たすことが示唆された。 以上の研究成果は、平成24年9月に第35回日本神経科学大会、平成25年1月に第13回脳と心のワークショップで発表した。現在は論文投稿に向け準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、目的である「睡眠時の嗅皮質からのトップダウン入力による嗅球新生顆粒細胞の除去の機能的意義の解析」について、1.覚醒時の匂い経験を反映して、食後睡眠時に嗅皮質からのトップダウン入力により除去される新生顆粒細胞の数は変化するのではないか、2.食後睡眠時のトップダウン入力で引き起こされる新生顆粒細胞の除去は、覚醒時に獲得した匂いの記憶の固定化に寄与するのではないか、という2つの仮説を立て検証を進めている。平成24年度は仮説1について検討を行う計画を立て、これを遂行し「研究実績の概要」に述べた結果を得た。以上より、「研究の目的」についての達成度は、当初の計画通り順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、当初の計画通り「食後睡眠時のトップダウン入力で引き起こされる顆粒細胞の除去は、覚醒時に獲得した匂いの記憶の固定化に寄与するのではないか」という仮説につき検討を行う計画である。実験の手法については、研究代表者自身や受入研究室でこれまでに用いているものを使用する予定であるので、特に問題なく遂行可能であると考えている。
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Research Products
(2 results)