2012 Fiscal Year Annual Research Report
高集積化MEMS用3次元複合パッケージング技術の確立と原子磁気センサへの応用
Project/Area Number |
12J02407
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻本 和也 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 原子磁気センサ / MEMS / セル / 多孔質アルミナ |
Research Abstract |
原子スピン偏極を利用して磁場を測定する原子磁気センサの感度・寿命は,アルカリ金属蒸気と不活性ガスを封入した"セル"の質に大きく左右されるが,従来のセルはガラス工芸的な手作業で作製されてきたため,作成者によるバラつき,コスト,生産性が問題であった.そこで,実用化に向けて,MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を応用したセル作製手法の確立が求められている.このような背景から本研究では,新しいオンチップセル作製手法を提案しており,本年度の研究目的は,オンチップセル作製手法の確立と,磁気センサとして使用することによる提案手法の実現可能性の実証であった. この目的に対して,まず始めにセル構造の熱設計を行った.具体的にはアルカリ金属を生成する試料を保持する試料ホルダーの断熱ガラス層の厚みが5mmの場合に,生成したアルカリ金属をセル内に留めておくことが出来ることをANSYS輻射解析により明らかにした.また,気密封止用の集積シリコンヒータの温度分布が,最適な封止温度である460-490。C以内になるように貫通孔と電極パターンを州SYS伝熱解析を用いて設計した.さらに,アルカリ金属を生成する試料のハンドリング性能,生成温度の低温化を目的に,多孔質アルミナ基材のアジ化バリウムと塩化カリウムを析出させた新しい試料であるアルカリ金属ソースタブレットを開発した.これらの要素技術を組み合わせてカリウムセルを作製し,カリウムの吸収波長である770.108nmのレーザのセルの透過率を測定することで十分量のカリウムの気密封止に成功していることを実証した.最後に,作製したカリウムセルを磁気センサのセンサヘッドとして使用し,心磁測定が可能な50pT(ピコテスラ)の高感度な磁気センサを構築することに成功した.この成果は,従来のガラス工芸的に代わる新しい手法の実現可能性を示せた点で,産業界からも注目されており今後の深化と展開が期待されている.これらの成果を学術誌に投稿中である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
目的通り,セルの作製と原子磁気センサとして磁気計測を行うことが出来たが,セル作製の気密封止の歩留り改善に苦心した結果,予定より半年遅れた.また,寿命評価や十分な再現性の評価には至らず,これらは次年度の課題である.
|
Strategy for Future Research Activity |
まず,提案手法により高感度な磁気センサを構築出来た成果を学会で発表する.また,計画の通り,提案手法の生産性と歩留りを改善するために一括に大量に生産可能なウェハレベルの作製手法に発展させる.具体的にはこれまでの手法で歩留り低下に繋がると考えられる5mm厚のガラス製試料ホルダーをシリコン製に変更すると共に,十分な断熱性能を実現するために,試料の局所加熱にも取り組む.また,大量生産に向けて,現行1cmのセルを数ミリに小型化し,脳磁計測用のセンサアレイを構築することを計画している.
|
Research Products
(1 results)