2012 Fiscal Year Annual Research Report
分子シミュレーションによる環境汚染物質ダイオキシンの生体内での影響の解明
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12J02465
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
宮城 慧 豊橋技術科学大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 異物受容体 / AhR / 分子シミュレーション / ダイオキシン |
Research Abstract |
平成24年度の研究実施計画として、(1)DNAに結合するために必要なAhRの二量体構造の作成、及び(2)AhRのDNA結合ドメインの作成を設定した。その中で、(1)に関する研究が大きく進展した。 (1)の二量体構造の作成には、様々な計算プログラムが必要となる。これまで使用した計算プログラムは、計算対象のサイズが大きくなると、計算時間が急激に増加し現実的な時間での計算が困難になる。 そのため、新規プログラムを導入し、並列計算機を用いて計算を実行することにより、現実的な時間での解析を実現した。その結果、これまで明らかになっていなかったAhRの二量体構造の一部を、十分な精度で予測することが出来た。更に、分子動力学シミュレーションを実行し、熱による二量体構造の変化を解析し、二量体形成に重要となる部位を特定した。また、その部位の電子状態を第一原理分子軌道計算により解析し、AhR二量体間の特異的相互作用を、電子レベルで初めて明らかにした。これらの計算結果は、第6回分子科学討論会、Sanibel Symposium2013において発表した。現在、計算結果をまとめ、査読付きの国際学術雑誌への投稿準備を進めている。 (2)の研究については、候補構造の作成に有効な鋳型構造が存在しないため、解析は進展していない。 現在、新しい実験構造がPDBに登録された場合に、その構造が鋳型構造として利用可能かを検討している。この鋳型構造が見つかり次第、DNA結合ドメインの構造を作成し、その構造に二量体形成ドメインの構造を結合し、AhR全体の候補構造を作成する予定である。 今年度は、さらに、「AhRと様々な異物間の結合機構の解明」についても研究を実施し、研究成果を論文として投稿したが、同じ研究テーマを行っている他の研究グループが、ほぼ同じ内容の研究成果を先に発表したため、投稿論文が採択されなかった。今後は、他の研究グループの研究動向を確認しながら研究を進め、研究成果を確実に論文化したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画の課題にあげた2点は、最終目標である「AhRの全体構造の作成」を達成するために必要な課題である。その課題の1つが当初の計画以上に進展したことを考えると、全体としては順調である。しかし、論文投稿に関しては進展がないため、今後、研究成果を確実に論文化したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、AhR二量体に対する構造解析を更に進め、二量体形成の機構を明らかにしたいと考えている。更に、AhRが様々な異物を受容した時に起こる、特異的な構造変化を解析し、異物の認識、及びそれに伴う構造変化に重要なアミノ酸を特定する。この研究により、AhR単体を対象とした研究では解明出来ない、異物認識機構に関与する重要なアミノ酸を特定できる。また、DNA結合ドメインの構造作成を引き続き検討する予定である。最終的な研究ターゲットであるAhRの全体構造は、約800個のアミノ酸で構成されているが、現在114個のアミノ酸で構成されたドメインの構造は、作成済みである。AhRの二量体形成ドメインとDNA結合ドメインを含んだ全体構造により近い構造を作成すること、そしてその構造に対し、構造最適化、構造解析を行うことが最終目標になる。これまでの実験により、AhRの全体構造の中で、1番目のアミノ酸に近い末端(N末端)に、重要なドメインが含まれていることが分かっている。そこで、まず、N末端側に近い200個程度のアミノ酸から成る構造を作り、分子シミュレーションを実行し、構造と電子状態の変化を解析する予定である。その結果は、今後、この分野の研究発展に貢献出来ると考えている。
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Research Products
(2 results)