2012 Fiscal Year Annual Research Report
実空間密度汎関数計算における超並列計算環境向け固有値解法の研究
Project/Area Number |
12J02480
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
二村 保徳 筑波大学, システム情報工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 固有値問題 / 電子状態計算 / 密度汎関数法 |
Research Abstract |
私は実空間密度汎関数法におけるバンド曲線の計算(バンド計算)で現れる大規模固有値問題に櫻井・杉浦法を適用することで高速化する研究に取り組んだ.櫻井・杉浦法の計算で律速となる連立一次方程式の求解に対し,実空間密度汎関数法で現れる行列に適した解法となるshifted block conjugate gradient rQ (SBCGrQ)法を新たに開発した.櫻井・杉浦法では複数右辺ベクトル,複数シフトの連立一次方程式を解く必要があるが,複数右辺ベクトルを効率良く解く方法であるblock CG rQ法,複数シフトを効率良く解く方法であるshifted CG法はそれぞれすでに提案されていた.これら2つの方法を組み合わせることにより,block CG rQ法のBlock Krylov部分空間を利用して反復回数を減らすことができるメリット,shifted CG法の1反復あたり1回の疎行列ベクトル積で計算を進めることができるメリット(本来はシフト数と同じ回数の疎行列ベクトル積が必要)を併せ持った解法とすることができた.スーパーコンピュータ向けにこの解法の分散並列実装を行い,SBcG rQ法の利用した場合shifted CG法を用いた場合に比べ,本研究で対象としている行列に対しては約5倍速度を向上を確認した.そしてスーパーコンピュータ「京コンピュータ」上で9924原子から成る大規模なシリコンナノワイヤのバンド計算を行った.これら一連の研究成果を論文にまとめプロシーディングを投稿し,それが採録されたため国際会議VECPAR2012で発表することができた.本研究での実験で扱ったシリコンナノワイヤは次世代の電界効果トランジスタの主要な部品として有望視されている.そのため本研究は情報通信機器のさらなる発展の基礎の一つとして位置づけることができると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では櫻井・杉浦法の負荷不均衡の問題に対して一つの解決策を提示し,その研究成果をまとめた論文が情報処理学会論文誌に採録された.また,実空間密度汎関数法のバンド計算における固有値問題に櫻井・杉浦法を応用することで高速化を果たし,国際会議のプロシーディングとして採録された.これらの研究は交付申請書の研究目的と実施計画に記載されているものであるため,研究計画はおおむね順調に推移しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでで述べた研究においてバンド計算ではノルム保存型偽ポテンシャルを用いていたが,その代わりにウルトラソフト偽ポテンシャルを利用することで行列の次元を減らすことができる.しかしながらウルトラソフト偽ポテンシャルを利用した際,元の(標準)固有値問題がより複雑な一般化固有値問題に変化する.一般化固有値問題を解く場合,櫻井・杉浦法では一般化シフト線形方程式を解く必要がありshifted block CG rQ法を直接用いることができなくなるという問題があった。そこで私はすでに提案されていたgeneralized shifted COCG法のアプローチを応用し複数右辺ベクトルを持つ一般化シフト方程式向けにgeneralized shifted block CG rQ法を提案した.小規模な問題では実用性を確認できたため,大規模問題での性能評価が今後の課題である.また,バンド計算だけでなくSelf Consistent Field計算の高速化も行なっていく.
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Research Products
(6 results)