2013 Fiscal Year Annual Research Report
実空間密度汎関数計算における超並列計算環境向け固有値解法の研究
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12J02480
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
二村 保徳 筑波大学, システム情報工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 固有値問題 / 電子状態計算 / 密度汎関数法 |
Research Abstract |
密度汎関数による電子状態計算におけるSelf consistent field (SCF)計算やバンド曲線計算において, 櫻井・杉浦法で複数の閉曲線を設置して固有値計算を行う際, 事前に固有値分布がわかっているとパラメータを効果的に設定することができる. 当特別研究員と共同研究者らはそのような状況に適した固有値分布の確率的推定法を2010年に提案したが, 第一年度に発表したshifted block conjugate gradient rQ法と本報告書記載の第1の雑誌論文でまとめられたBlock bilinear form近似法の考え方を組み合わせることで, この固有値分布確率的推定法の計算を高速に実行できるアルゴリズムを新たに開発した. このアルゴリズムを利用することで, 電子状態計算で現れる行列に対する固有値分布の確率的推定法の計算が従来の固有値を高精度に求める解法に比べ約1/27の計算時間で行うことができることを示した. この結果より提案手法が固有値解法の前処理として十分小さいコストで用いることができるといえる. この研究の成果は当特別研究員の博士論文において発表された. また, 当特別研究員らは櫻井・杉浦法の1万原子規模のシリコンナノワイヤのSCF計算で現れる標準固有値問題に対する性能を確かあるため, 京コンピュータを用いて数値実験を行った. この計算は約900万次元の疎行列の約2万の固有対を求める大規模な問題である. この実験の結果, 櫻井・杉浦法を並列性能は高いものの, 内部で用いたSBC GrQ法による線形方程式の求解に多くに反復回数を要するため, 従来解法である固有値問題向け共役勾配法に対し, 計算時間が多くなることが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当特別研究員は研究テーマである実空間密度汎関数計算の固有値問題の並列解法について着実に研究成果を出し, 計画以上の進展があった. 研究は交付申請書の研究の目的に記載されている通りに順調に進んだ. また, 研究活動において得られた成果をまとめ, 論文を投稿し, 厳正な査読を通じて学術雑誌に採録された. また研究成果を国際会議および国内会議において積極的に発表した. 特に国際会議3PGCIC2013においては研究成果が高く評価されたことによりBest Paper Awardを受賞した.
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要の最後で述べた計算においては並列資源を大量に用いた場合, 櫻井・杉浦法が共役勾配法より速く計算できる可能性があるが, そのために必要な並列資源の量が現実的でないため, さらなる高速化手法の開発が必要であるということが確認できた. このような結果を踏まえ, 今後当特別研究員は櫻井・杉浦法のさらなる高速化のため道筋を探っていく予定である.
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Research Products
(7 results)