Research Abstract |
本研究では,2次元フォトニック結晶ナノ共振器におけるバンドフィリング効果という新規物理現象を用いることで,集積化,高速動作および低消費電力を同時に満足する新規光論理ゲートの提案を行うとともに,その設計理論を構築し,省電力光ルータ実現のための基盤研究を推進することを目的としている. 本年度の実施計画通り,フォトニック結晶ナノ共振器問題のための3次元ベクトル有限要素法ソルバを新たに開発することに成功した.具体的には,まずはじめに,極めて性能のよい吸収境界条件である完全整合層を有限要素法に取り入れた定式化を行った.また,より高精度な解析を行うために,要素としてLTQN四面体エッジ要素を導入した.続いて,定式化に基づき,プログラミング言語C++で実装を行った.共振器問題のための有限要素法では,最終的に固有値問題を解くことになるが,本研究では固有値方程式を解くためのアルゴリズムとして逆反復法を採用し,連立方程式を解く問題に帰着させている.連立方程式を解くための数値計算ライブラリとしては,インテルが提供しているPARDISOを用いている.PARDISOは,大規模な複素数型の対称行列を解くことができるため,有限要素法に基づく電磁波解析を行う場合に適していると考えられる.開発の完成フェーズにおいては,すでに報告されている光共振器型デバイスに関する実験結果との比較を行い,本理論の妥当性を証明した上で,精度評価を行い,解析規模についての限界を明らかにした. 本研究の成果である3次元ベクトル有限要素法ソルバを用いることによって,フォトニック結晶ナノ共振器の性能指標となるQ値およびモード体積の評価が可能となる。また本年度の成果により,総当たり的な試作および実験の繰り返しを避けることができるため,開発時間および開発コストを削減できると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画通り,3次元ベクトル有限要素法ソルバの開発に成功しているため,順調に研究が進展していると認識している.また,本年度では3件の査読付き論文を掲載し,10件の内外における学会発表を行っており,実態としての成果も十分に挙げていると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を遂行するにあたり,研究活動の基礎・基本である最新研究動向の把握,本質の探究および理解,固定観念からの脱却を日常的に意識し,着実に研究を推進する,また,学会活動などを通して知識の幅を広げるとともに,本研究課題の学術的な新規性および社会的意義を発信していく.次年度の研究計画では,非線形光学効果を考慮した共振器問題のための3次元有限要素法ソルバを新たに開発する.具体的には,前年度に開発を行った微小共振器設計のための3次元ベクトル有限要素法ソルバに対して,非線形性を考慮するための理論を導入する.これにより消費電力の見積もりが可能となるため,低消費電力動作が可能な微小共振器構造の探索を行う.さらに,入出力部分を含めた光論理ゲート全体の解析を行うために,3次元有限要素時間領域ビーム伝搬法の開発を行う.
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