Research Abstract |
晩期型巨星で凝縮した珪酸塩や酸化物などの微小鉱物(ダスト)は,中心星からの質量放出風により星間空間放出され,一部は太陽系母体の分子雲,さらに原始太陽系円盤に取り込まれ,太陽系の原材料物質となったと考えられている,始原的隕石中にまれに含まれるプレソーラー(太陽系前駆)粒子は,進化末期の巨星(AGB星)や超新星爆発に特有の同位体組成を示すため,進化末期の恒星でできたダストの生き残りである.赤外観測スペクトルを用いて進化末期の恒星に存在する星周ダストを調べること,また,プレソーラー粒子を分析し,進化末期の恒星から初期太陽系までの様々なプロセスを遡って読み解くこと,の二つを組み合わせることで,ダストの形成から太陽系の材料物質となるまでを明らかにすること目指して研究をおこなっている. 本年度は,星周アルミナの凝縮過程および赤外スペクトルの理解を目指し,過飽和比条件を制御した系におけるアルミナ凝縮実験に向けた真空炉改造,熱プラズマ中でのアルミナ凝縮実験,赤外吸収スペクトルのダスト形状依存性に関する理論的研究をおこない,特に熱プラズマ中でθアルミナが凝縮すること,またMg含有量に依存して構造変化することを示した,また,非平衡普通コンドライト中のアルミナ粒子同定およびFE-SEM,EDS,CLによる分析をおこない,新たなアルミナ試料80粒子を同定し,隕石中アルミナ粒子のカソードルミネッセンススペクトルの多様性を初めて示した,さらに星間空間でのアルミナダスト変成過程を明らかにするため,星間空間でのダストプロセスを模擬したイオン照射実験およびFE-SEM,FIB,TEM,CLによる分析をおこない,星間空間での宇宙線などの照射により,コランダムダストの結晶構造が損傷し非晶質およびγアルミナになりうることを示した.成果の一部を論文,国際学会で発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画していた熱プラズマ中での凝縮実験,真空炉改造,アルミナ試料へのイオン照射実験などをおこなった.熱プラズマ中でのアルミナ凝縮実験では,当初計画に加え,Mgを含むガスからの凝縮実験もおこない,凝縮物の結晶構造がMS含有量に依存して変化することを示した.コンドライト中プレソーラーアルミナ粒子の内部構造の解明のため,新たに始原的なコンドライトの酸処理を行い,アルミナ粒子を抽出した.粒子内の同位体分析は年度内に完了しなかったものの,予定していたSEM,EDS,EBSD分析に加えて,カソードルミネッセンス分光分析を全粒子に対しておこない,隕石中アルミナ粒子のカソードルミネッセンススペクトルが10種類以上の多様性をもつことを示し,総合的には当初の計画以上に進展した.
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Strategy for Future Research Activity |
NanoSIMSによるアルミナ粒子の同位体組成分析を5月に予定しており,その結果にもとづき,プレソーラー粒子と太陽系アルミナ粒子のカソードルミネッセンススペクトルの類似点,相違点を明らかにし,形成過程との関係を議論する.また,粒子内部の酸素同位体分布,Ti分布を明らかにする.He,Hイオン照射実験をおこなったアルミナ試料のFIB-TEM観察を継続しておこない,照射条件と内部構造の関係を明らかにする.イオン照射試料の酸溶解実験をおこない,プレソーラーアルミナ粒子の表面構造との比較から,星間空間での変成過程を議論する.
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