2012 Fiscal Year Annual Research Report
ローンペア酸化物における電子局在性制御による材料設計指針の構築
Project/Area Number |
12J02558
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 博之 京都大学, 低温物質科学研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | ローンペア酸化物 |
Research Abstract |
一般に典型元素酸化物は,その価電子帯が主に酸素のp軌道により構成されており,他の化合物半導体に比べ正孔導入に必要なエネルギーが高く局在しやすいため,p型の電気伝導を示すものは稀である.一方,2価Snの単純酸化物であるSnOは典型元素酸化物としては珍しくp型の電気伝導性を示す.これは,SnO中で2価Snがローンペア電子と呼ばれる孤立電子対を有し,価電子帯上端で酸素のp軌道と混成することで価電子帯のエネルギー準位が浅くなっていることが一因と考えられる.SnOは大気下において熱力学的に不安定であると報告されており,これまでに良質な結晶が得られていないためその物性・電子状態研究は途上にある.本年度の研究では,SnOを薄膜として基板上に成長させ,配向性試料が得られる条件を探索した. SnO焼結体ターゲットを使用し成膜した薄膜のXRDプロファイルより薄膜はSnO単相であり,(001)配向で成長していることがわかった.また,系統的なXRD測定より薄膜と基板の結晶の面内方位は<110>SnO//<100>YSZという方位関係であることがわかった.ホール効果測定とゼーベック測定の結果,試料はp型の電気伝導性を示すことがわかった.キャリア濃度の温度依存性から,その活性化エネルギーは約0.16eVであった.これまでに報告されているSnOの室温におけるHall移動度は2.4cm^2/Vs程度であり,今回作製した薄膜の室温におけるHall移動度が5.3cm^2/Vsであったことから,比較的結晶性の高い試料が作製できたことが示唆される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ当初の計画通り,初年度における結晶成長条件の最適化を終えることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
第一原理計算による欠陥の形成エネルギー評価を行い,SnOの電子状態と伝導機構のメカニズムに関して考察を行う予定である.
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Research Products
(2 results)