2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J02617
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
加治 いずみ 北海道大学, 大学院・医学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 短鎖脂肪酸 / FFA2 / FFA3 / 腸内分泌細胞 |
Research Abstract |
大腸菌リコンビナントおよび合成ペプチド抗原を用い、ウサギおよびモルモット血清より、G蛋白質共役型短鎖脂肪酸受容体FFA2およびFFA3に対する抗体を各々4種類ずつ得た。免疫組織化学法により、FFA2はこれまで報告されていた大腸L型内分泌細胞の他に、水分泌を担うと考えられている表層の上皮細胞の細胞膜に検出できた。また、胃、上部小腸ではL細胞にFFA2発現はなく、EC細胞に発現していることを明らかにした。消化管の機能調節および内臓感覚に関与する迷走神経の下神経節においてもFFA2が発現していたが、内臓神経を構成する後根神経節には発現がなかった。一方、FFA3は腸管各部のL細胞および粘膜固有層の神経線維に発現が見られ、下神経節および後根神経節も陽性であった。これらの所見はRT-PCRの結果と一致し、大腸だけでなく上部消化管においても短鎖脂肪酸受容体が機能していることが示唆された。そこで、上部消化管における短鎖脂肪酸受容体の機能的発現を確認するため、麻酔下のラット十二指腸を潅流し、管腔への重炭酸分泌および血中への消化管ホルモン分泌量を測定する技術を習得した。灌流液中の短鎖脂肪酸は、重炭酸分泌およびGLP-2放出を促進した。重炭酸分泌はセロトニン受容体拮抗薬で一部抑制されることから、L型およびEC型腸内分泌細胞が短鎖脂肪酸を感知している可能性が示唆された。以上の結果は、免疫組織の所見とよく一致している。また、モノカルボン酸輸送体阻害薬またはカプサイシン前投与によっても反応が抑制されることから、短鎖脂肪酸の吸収経路の存在が示唆された。これらの知見は、腸内細菌の過増殖と機能性ディスペプシアとの関連を明らかにするための重要な基盤となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析に必要な特異抗体の作製、消化管ホルモン分泌量を測定する技術の習得、蛍光in situ hybridization(FISH)法の確立といった研究方法を習得し、短鎖脂肪酸受容体の機能と発現について、生理実験による所見と形態学的所見を比較することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた技術と知見をもとに、食事や病態が引き起こす消化管管腔内環境の変化が粘膜における短鎖脂肪酸受容体の発現様式に影響するかどうかについて検討する。また、今回得られた特異抗体を用い、免疫電顕によっても受容体発現を解析したい。
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Research Products
(8 results)