2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J02666
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
三浦 佳代子 富山大学, 生命融合科学教育部, 特別研究員(DC1)
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Keywords | メタ記憶 / 記憶方略 / 前頭葉機能 |
Research Abstract |
本研究では,主に情動機能と前頭葉機能に着目し,メタ記憶に及ぼす要因についての検討,メタ記憶の個人差に関する神経基盤の解明を宅な目的としている。本年度は,抑うつの有無によるメタ記憶のモニタリングの正確さの違い,モニタリングの正確さに関与する前頭葉機能の側面について検討することが目的として,健常成人20名を対象に実験的研究を実施した。主な成果は以下のとおりである。 1.メタ記憶と情動の関連 メタ記憶のモニタリング機能の正確さと抑うつの関連について,学習判断(Judgment of learning;JOL)のキャリブレーション指標を用いて検討した。その結果,抑うつ群は非抑うつ群に比べ過小評価を行っており,一方,非抑うつ群は,自分の記憶を過大評価する傾向がみられた。しかし,モニタリングの正確さという点から両者に統計的な有意差はみられなかった。このことから,抑うつはモニタリングの正確さを悪くするというより,抑うつを伴わない者に比べ,記憶自己効力感を低下させることが示唆された。 2.メタ記憶のモニタリング機能の正確さと前頭葉機能検査の関連 メタ記憶のモニタリング機能には前頭葉が関与していることが脳画像研究や損傷研究により明らかにされている。しかし,前頭葉機能検査との関連について検討している研究はなく,前頭葉機能の中でもどのような側面がメタ記憶に影響しているのかは明らかでない。そこで,JOLに焦点を当て,正確さの指標としてキャリブレーション指標を用い,種々の前頭葉機能検査の成績との相関分析を実施した。その結果,ストループ検査(干渉・スイッチング条件)の遂行に時間がかかっている人ほどモニタリングが不正確であった。ストループ検査の干渉・スイッチング条件は,干渉抑制や課題切り替えの能力が必要である。このことから,モニタリング機能の正確さには,特に抑制機能やシフティング,ワーキングメモリなどが関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,情動機能や前頭葉機能とメタ記憶の関連について検討することを目的として,健常成人を対象とした研究に取り組んだ。研究の進行は良好であり,研究成果の発表を次年度に予定していたが,随時}関連学会(日本心理学会,神経心理学会,認知神経科学会,北陸心理学会)にて発表を行った。また,北陸心理学会では,前頭葉機能を中心とした神経心理検査とメタ記憶のモニタリング機能の正確さとの関連について発表し,大会発表賞を受賞した。くわえて,次年度に実施を計画していた神経疾患患者を対象とした研究についても,一部開始しており,おおむね順調に進展しているものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の健常成人を対象とした予備的研究をもとに,次年度は神経疾患患者,特にパーキンソン病患者を対象とした研究を行う。パーキンソン病患者では,前頭葉機能や記憶機能の低下,また,アパシーや抑うつなど情動の側面でも問題が生じることがある。したがって,まずはパーキンソン病患者の認知機能を明らかにするために,種々の神経心理学的検査を実施する。情動の側面については質問紙調査を行う。これにより,前頭葉機能や情動機能,メタ記憶の関連について検討する。
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