2012 Fiscal Year Annual Research Report
関数データにおける非線形多変量解析法の開発-社会科学の多様な現象を捉える-
Project/Area Number |
12J02676
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 倫生 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 関数データ解析 / クラスター分析 / 次元縮約 / 欠測データ / 多重補完法 |
Research Abstract |
本研究では,社会・行動科学で得られるような,多くの要因を含んだ複雑なデータを対象とした関数データ解析手法の開発を目的とする.本研究は,非線形な現象を捉えるための関数データ解析手法の開発(研究A)及び関数データにおける欠測値問題の理論的な整備・解析手法の開発(研究B)の2つの研究から構成される. 研究A:関数データの次元縮約及びクラスタリングの同時最適化法を開発し,数値シミュレーションや実際のデータへの適用例(経済指標データ及び握力による生体データ)を通して,提案手法の有用性を実証した.また,提案手法の持つ欠点を明らかにし,欠点を補う新たな関数データのクラスタリング法を提案した.2つ目の方法についても数値シミュレーションによってその性能を確認し,実際のデータへの適用例(音声認識データ)を通してその有用性を実証した.これらの提案手法を利用することで,複雑な時系列データを従来法よりも適切に分類し,視覚的に情報を把握できるようになった. 研究B:関数データ解析における欠測値の補完方法として,近年利用され始めている多重補完法についての理論的研究を行った.具体的には,単純な回帰分析モデルにおいて,回帰係数の多重補完法による推定量の漸近分布を導出し,最尤推定量との比較を理論的に行うとともに,シミュレーションによって数値的な比較も行った.この結果から,推定精度の観点からは応用上,多重補完法よりも最尤推定法を利用する方が良いことが分かった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上述の研究Aについては,関数データのクラスター分析手法を1つ開発する予定であったが,さらに提案手法の欠点を補うような新たな方法を考案できた.さらに,クラスター分析手法だけでなく,利用頻度の高い関数データ解析手法である関数主成分分析において,新たな因子回転法を提案し,さらに回転後の主成分カーブの信頼区間の導出することができた.以上の理由から,当初の計画以上に進展していると評価した.
|
Strategy for Future Research Activity |
研究Aについては,研究計画通り,提案手法のいくつかの問題点を解決する.具体的には,提案手法を実行するためには,事前にいくつかのパラメータを設定する必要があるが,その設定方法を適切に行う方法はまだ確立できていない.また,2つの提案手法は,データに内在するクラスター構造に無関係なデータ間の関連に,その性能が大きく左右されてしまうという問題点がある.今後はこれらの問題点を克服するための方法を開発する予定である.研究Bについては,通常の多変量データに対する本年度の研究内容を,関数データ解析で利用できる形へと拡張する.特に,関数データ解析における多重補完法の推定量の漸近的性質を明ちかにし,関数データ解析における欠測データ解析の利用を助けるような研究を行う.
|
Research Products
(11 results)