2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J02705
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
花田 良輔 北海道大学, 大学院・総合化学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 全合成 / タキサン / 付加環化反応 / エポキシニトリル / アセチレンジコバルト錯体 |
Research Abstract |
本年度において実施されたタキサンジテルペノイドの合成研究について報告する。 本研究ではまず、タキサン類の共通構造である三環性骨格(A-B-C環)を有するモデル化合物の合成を行った。始めにタキサン骨格のBC環部の構築を検討した。これには当研究室で開発された[6+2]型付加環化反応による8員環構築法を応用した。すなわちルイス酸存在下、アセチレンジコバルト錯体を6員環エノールシリルエーテルと反応させると、8員環と6員環がトランスに縮環したビシクロケトンを立体選択的に得た。 続いて環化体のカルボニル炭素に対し、4-ブテニルリチウムを作用させ、末端オレフィンを有するアルキル側鎖を導入した。この末端オレフィン部位をマルコフニコフ型のヒドロシアノ化反応条件に付し、シアノ基を導入した。また、[6+2]型付加環化反応で利用したコバルト錯体部はアルケンへの変換を経て、エポキシドに導いた。このエポキシニトリルに塩基を作用させα-シアノカルバニオンを調整すると、エポキシドへの6-エキソ型の分子内環化反応が進行し、A環部6員環が形成された。 タキサン骨格に特徴的な歪んだ橋頭位二重結合は、以下の方法により導入された。まず、エポキシドの開環により生じたアルコールを脱水反応条件でアルケンとした。次にこのアルケンを、過酸で処理しβ,γ-エポキシニトリルへと変換した。このものをリチウムジターシャリーブチルビフェニリド(LiDBB)で処理してシアノ基の還元的除去とエポキシドの開環を一挙に行い、タキサン骨格を有するモデル化合物の合成に成功した。現在、本戦略に基づく天然物タキシンBの合成を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画で掲げた、タキサン骨格を有するモデル化合物の合成を滞り無く達成することができた。本合成ルートは15工程と極めて短工程であり、[6+2]型付加環化反応の有用性を実証できたと思われる。現在、本研究の論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
タキサン類天然物に導くために、官能基を導入した6員環エノールシリルエーテル(C環部に対応)を用いて[6+2]型付加環化反応を検討する。核間位のシロキシ基は立体保持で水素原子に置き換える必要があるが、これはジアゼンのヒドリドシフトを利用することで実現可能と思われる。 ここで得られた二環性化合物にモデル化合物と同様の戦略でA環を構築し、官能基を整えて天然物Taxine Bの全合成を目指す。
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Research Products
(2 results)