2012 Fiscal Year Annual Research Report
寄主特異的な産卵行動多型が引き金となるクモヒメバチ類の同所的種分化機構の解明
Project/Area Number |
12J02707
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
高須賀 圭三 神戸大学, 農学研究科, 特別研究員PD (00726028)
|
Keywords | クモヒメバチ / クモ / 寄生 / 産卵行動 / 種分化 / 分子系統解析 / 系統樹 |
Research Abstract |
クモヒメバチ類の特異的な産卵行動様式に依拠した同所的種分化機構解明のため、本年はその基礎的データの収集、分子系統樹作成およびインドネシアにおける調査に従事した。 分子系統解析では、大阪自然史博物館の松本吏樹郎氏と共同で、特に2雄Zatypota属の種間系統樹作成に当たり、欧州産サンプルを加えるために2012年9月から10月にかけてイギリスならびにスウェーデンでの調査を行った。得られたサンプルのほとんどは幼体クモに寄生した状態の幼虫であり、クモもハチも形態からの同定は不可能であったが、クモをDNAバーコード同定し、その寄主記録をTaxapad 2012を使って引くことでハチの同定を行うという手法を用いた。 クモヒメバチ類は、熱帯において急激に種数を減らすという現象がある。それが捕食圧によるものか気温などの外部環境によるものかは定かでないが、約1,000mを超えた辺りの熱帯の高山帯ではクモヒメバチ類が散見されることを見出している。さらに、いわゆる陸の孤島として隔絶された熱帯高山帯で同属のクモヒメバチ類が複数種得られる系がもしあれば、それらがそのミクロバビタットにおいて同所的に種分化している可能性が大いに考えうる。まずはその高山帯における複数の同属近縁種の分布域を見出すために、2013年1月から3月にかけてインドネシア・南スラウェシ・ロンポバッタン山(標高約2,830m)の2,000mポイントにマレーゼトラップ5基を約1ヵ月半設置することに成功した。今後、得られたサンプルを詳細に調べ、熱帯におけるクモヒメバチ類の分布について考察する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子系統解析や海外での調査はおおむね順調に進展している。一方、マダラコブクモヒメバチの寄主別個体間のミトコンドリアCOI領域による予備的解析では大きな差異が見られなかったことから、その点を勘案して開発に時間と労力、資金を多大に要するマイクロサテライトマーカーの作成を本年は見送った。
|
Strategy for Future Research Activity |
マダラコブクモヒメバチの寄主系統間に現在のところ遺伝的差異が認められないということは、当初設定した仮説に反するもののサンプル数の少ない予備的段階であるため、今後検証の精度を上げて追試を行う必要があると考えている。立ちはだかる問題としてマイノリティ寄主に寄生する個体群の稀少さが挙げられるが、次年度の課題として取り組んでいく。
|
Research Products
(7 results)