2012 Fiscal Year Annual Research Report
Slp2-aが制御する上皮細胞の繊毛への新規極性輸送機構と細胞間相互作用への影響
Project/Area Number |
12J02766
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安田 貴雄 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | Slp2-a / Rab27 / Podocalyxin / MDCKII細胞 / claudin-2 |
Research Abstract |
多細胞生物は、頂端側(apical)と側底側(basolateral)という極性をもった上皮細胞同士がシート状に接着して形成される上皮構造を形成し、細胞膜上の輸送蛋白質や膜小胞輸送系によって方向性のある物質輸送を行うと同時に、体の内と外を仕切るバリアの役割を果たすことによって外界とは異なる内部環境をつくりあげている。しかし依然として、細胞の極性形成の分子メカニズムやバリア機能獲得機構に関する詳細は明らかになっていない。本研究では極性細胞のモデルであるイヌ腎臓尿細管上皮細胞株(Madin-Darby canine kidney II;MDCK II細胞)を用いて、報告者の研究室で同定された膜輸送に関わるRab27Aの結合分子であるシナプトタグミン様蛋白質(synaptotagmin-like protein 2-a:Slp2-a)の極性輸送における役割を明らかにすることを目的とした。報告者はこれまでの研究で、(1)Slp2-aは、上皮細胞が極性を形成すると発現が上昇しapical面に局在すること、(2)Rab27によって運ばれるpodocalyxin小胞をapical面に繋ぎとめること、さらに、(3)apical面に繋ぎとめられたpodocalyxinは、その下流へのシグナルを調節することで細胞間のバリア機能を有するタイトジャンクションの構成因子claudin-2の発現調節に関わることを明らかにした。報告者は、このSlp2-aを介した上皮細胞における「apical面への極性輸送」と「細胞間相互作用」との間に新たな機能的関係が存在することを明らかにし、Molecular Biology of the Cell誌(Yasuda T, et al, Mol Biol Cell, 23 : 3229-3239, 2012)に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
報告者は、(1)シナプトタグミン様蛋白質(synaptotagmin-like protein)2-aが腎臓尿細管上皮細胞において、細胞間隙のバリアとして働くタイトジャンクションの構成因子claudin-2の発現調節を行うこと、さらに(2)claudin-2の発現調節に関わるシグナル分子であるpodocalyxinを同定し、その輸送メカニズムとシグナル伝達機構を明らかにしました。本研究結果は、Slp2-aを介した「apical面への極性輸送」と「細胞間相互作用」との間に新たな機能的関係が存在することを発見した点で、大変興味深い結果と言えます。以上の研究成果を筆頭著者として原著論文にまとめるだけではなく(Yasuda T, et al., Mol Biol Cell, 23:3229-3239, 2012)、共同研究者として上皮細胞の管腔形成におけるSlp2-aの働き(Nat CellBiol. 14 : 838-849, 2012)も明らかにしていることから、採用1年目は期待以上の進展があったと評価できます。
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Strategy for Future Research Activity |
大変興味深いことに、RNA干渉法によりMDCKII細胞におけるSlp2-aの発現を低下させると、claudin-2の発現が低下するだけではなく、細胞の大きさが増加することも同時に見出している。申請者の研究室において、Slp2-aはメラノソームの輸送のみならず、メラノサイトの形態にも影響することを見出しており(Nat CellBiol, 6 : 1195-1203, 2004)、Slp2-aが上皮細胞の形態形成にも関与している可能性が示唆される。しかしながら、Slp2-aがどのようにして上皮細胞の形態を制御しているのかは未だ明らかではない。Slp2-aは上皮細胞の繊毛にも一部局在しており、細胞の形態異常を起こす繊毛関連疾患(ciliopathy)との関連も示唆される。そこで本研究課題では、Slp2-aによる上皮細胞の形態形成メカニズムの解析を行うことにより、繊毛関連疾患における細胞の形態異常を起こすメカニズムを明らかにすることを目的とする。
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Research Products
(4 results)