2012 Fiscal Year Annual Research Report
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12J02801
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
和田 慎一郎 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 種分化 / 交雑帯 / 陸産貝類 / 海洋島 |
Research Abstract |
野外調査を行い、対象地の陸貝種構成・密度、および植生・pH・落葉層の深さなど生息環境について記録した。これらのデータは本研究における仮説を検証していく上で重要な基礎データとなる。マイクロサテライトマーカーの開発についてはLian et al.(2006)による手法を採用した。マーカー候補となる配列は問題なく得られ、実用は目前である。本研究の対象陸貝集団はミトコンドリアDNAによる遺伝的分化がほとんど認められず、これまでは詳細な遺伝的構造や交雑の程度を調べることができていなかった。本研究において小範囲の交雑帯の詳細な遺伝解析は主要課題のひとつであり、マイクロサテライトマーカーの導入によってさらなる研究の進展が期待できる。殻の形態解析をおこなうため、野外調査の際に対象陸貝の死殻を集めた。集めた死殻は実体顕微鏡下でデジタル写真撮影をおこない、画像から殻の形態解析をおこなった。殻の高さ・幅や巻きの凹凸といった複数のパラメーターを用いた主成分分析により、殻の形態的特徴の定量化方法を確立した。一方、対象陸貝の系統的な位置づけや起源は明らかになっていない。そこで近縁種であるキビオカチグサを採取し、小笠原諸島外の近縁種を扱っている亀田勇一氏(東北大・学振特別研究員PD)と共同で系統解析をおこなった。その結果、小笠原諸島に生息する対象陸貝を含むキビオカチグサ近縁種群は単系統であり、南西諸島のホラアナゴマオカチグサに近縁であることが判明した。加えて小笠原諸島のグループは、殻形態における保守性と急速な変化という対照的な進化過程を含むことがわかった。同系統・小範囲内で異なる進化パターンが観察できるは非常に稀であり、海洋島における多様化について新たな洞察をもたらすと考えられる。この結果についてはすでに論文としてまとめ、現在海外学術誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね研究計画どおりに研究を進められ、関連データが集まりつつある。交配実験に関してやや遅れがあるが、一方で成果の一部は既に論文としてまとめ海外誌に投稿中であることから、全体的にはおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、基本的には計画どおりに進めていく。前年度の悪天候により交配実験に関してやや遅れがあるが、H25年度初めに予定している調査で対象陸貝の野外集団の状況をみて、交配実験をどこまで進めるかを適宜判断する。場合によっては遺伝解析および形態解析を中軸として研究を進めることを考慮しておく。
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Research Products
(2 results)