2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J02802
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
望月 直人 筑波大学, 数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 線維芽細胞 / 血管内皮細胞 / メンブレン基板 / 細胞シート / 電気化学 / ナノ・マイクロ凸凹基板 / 再生医療 / オリゴペプチド |
Research Abstract |
線維芽細胞と血管内皮細胞の2種類の細胞を用い、メンブレン基板上で共培養を行った。メンブレン表面には、直径400nmの貫通孔が多数形成されており、細胞層の上下に培地成分を置くことが出来るため、酸素や栄養供給の改善、また代謝産物の拡散促進が期待できる。共培養の結果、3日後に内皮細胞の細かな網目構造が細胞シート内に形成され始め、1週間後にはより太い網目構造が確認できた。すなわち、細胞シート内に血管様構造を付与し、また培養と共に細胞シート内の血管様網が時々刻々と変化していく様子を捉えることに成功した。さらに、培養後の細胞シートは、オリゴペプチドを用いた独自の電気化学的細胞脱離法に基づき、10分以内という短時間に回収することが可能であった。回収後、細胞シートの組織切片を作製して厚みを観察することで、メンブレン容器を使用しない従来法に比べ、2倍以上の厚みである50マイクロメートル程度の厚みのある血管様構造付き細胞シートが作製できていたことが確認された。また、これらの細胞シートを積層化することによって、さらに厚みのある細胞組織を作製することに成功した。 一方で、ナノ・マイクロ凹凸基板に線維芽細胞を播種し、基板における細胞の接着・伸展の差異を、電子顕微鏡や共焦点レーザー顕微鏡などを用いて定性的に評価した。ここで本実験は、ナノ・マイクロ凹凸基板の作製部分については連携企業との共同研究であり、作製した基板を用いた細胞操作全般は申請者が行なっているものである。今回の実験によって、ナノ・マイクロパターンによる細胞の形状・伸展の差異が顕著に観察することができた。また、メタクリル系・スチレン系樹脂といった基板の材料に依存する細胞の接着性の差異も観察された。このことから、基板の材料の種類や形状を上手く最適化することにより、細胞の伸展の仕方やその度合い、さらには細胞の接着性を制御できることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
静置培養下にて厚みを有する細胞シート内への毛細血管様構造の付与に成功したが、これは研究の目的の一つである細胞シートに血管構造を導入する技術の開発を進める上での有用な第一歩である。また、培養表面の構造や材料に依存した細胞の振る舞いが観察され、これは細胞と基板表面のインターフェイスの解析や本研究のもう一つの目的であるヒト臨床サイズの細胞シートの回収技術の開発に、充分寄与され得るものである。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞シート内に形成された血管様構造のより詳しい解析を行うと共に、動物実験によって細胞シートの移植による治療効果を評価する。また、培養表面のパターン構造が異なる基板を用いることで、それらのパターンが細胞の接着・進展・形状へ与える影響を、細胞の形態に着目して観察すると共に、その結果として細胞内部の代謝機構に与える影響を、初代細胞を用いて評価していく。
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Research Products
(5 results)