2012 Fiscal Year Annual Research Report
大規模代謝反応システムにおけるメタボロミクスデータからの数式モデル構築法
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12J02804
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩田 通夫 九州大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | パラメーター推定 / バイオケミカルシステム理論 / ニュートン法 / 数式モデリング / 時間変化データ / 代謝反応システム / シミュレーション / メタボロミクス |
Research Abstract |
近年、細胞内代謝物濃度の時間変化を網羅的に測定できるようになってきた。これことに伴い、代謝物濃度の時間変化データから、細胞内で起こっている代謝反応を記述する数式モデル構築技術と、これを用いたコンピュータシミュレーション技術の確立が重要視されている。そこで本研究では、この数式モデル構築をバイオケミカルシステム理論に基づくS-システム型またはGMA-システム型微分方程式に基づき行い、式中の速度パラメータを代謝物濃度の時間変化データから効率よく推算する手法を確立すること、これを理化学研究所研究チームが保有する大規模代謝反応システムの代謝物濃度の時間変化データへ適用し、その有用性を明らかにすることを目的とする。特に平成24年度は、以下の3項目について検討した。 1.これまでの結果を慎重に検討し、さらに効率的な速度パラメータ推算法を確立する。 2.実験誤差を含むデータからの速度パラメータ推算を可能とする。 3.収束解が複数ある場合にその中から適切なものを選択する方法を検討する。 これまでに、ニュートン法を基礎とするパラメータ推算法を構築し、これを他研究者により構築された弛緩法に基づくパラメータ推算法と比較することにより、前者が計算速度、精度ともに優れていることを明らかにしていた。その後検討を進めたところ、実験誤差を含むデータを取り扱う際に、両手法ともに推算の繰り返し過程で計算障害が発生し、推算性能が著しく低下してしまうことがわかった。そこで、ニュートン法のアルゴリズムを改良し、データが実験誤差を含む場合でも速度パラメータを効率よく推算できるようにした。また、速度パラメータ推算値を用いた計算線が、代謝物濃度の時間変化データの挙動をうまく表すことを確認した。さらに、収束解が複数ある場合、反応次数の収束値の範囲に束縛条件を設けることである程度まで対処できることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
共同研究先の研究グループが保有する大規模代謝反応システムの代謝物濃度の時間変化データを解析することを念頭に置きながら理論的な研究を行うことで、実験を行う研究者が現在求めていることに即した解析を行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、構築した速度パラメータ推算法の実践的応用を重視した研究を進める。平成24年度は、主に比較的小さな代謝反応システムをケーススタディとして解析を進めてきたが、本年度はより大きなシステムに対する対応策を検討する。その中で、共同研究先の研究グループが保有するメタボロミクスデータからの速度パラメータ推算を試みる。 これまでに行った研究成果については、現在1報が審査中、1報が原稿をほぼ書き終え5月中に投稿する。さらに複数の論文を執筆し、研究成果の出版活動にも力を入れる。
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Research Products
(5 results)