2014 Fiscal Year Annual Research Report
親密な関係と暴力が共存する共同体の理論的解明--バタイユの共同体論を中心に
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12J02805
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮澤 由歌 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | バタイユ思想研究 / フランス現代思想 / サディズム/マゾヒズム研究 / クィア理論 / ジェンダー研究 / 人文学 / ベルサーニ思想研究 / 共同体研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ジョルジュ・バタイユにおける暴力と共同体の問題を解明することを目的としている。2014年度においては、バタイユ全集の全体的な精読をとおし、公刊を見通した博士論文の執筆のためのテーマでいくつかの学会発表をした。具体的に挙げられる成果としては、2本の論文掲載(査読あり1本、英語論文1本)と3度の個人発表(国内発表2度、国際学会1度)がある。
1本目の論文として、「マゾヒズムとサディズムの暴力性――バタイユにおけるその解決」というタイトルで執筆し『年報人間科学』に投稿、査読をとおり掲載された。この論文は、親密さと暴力をともに特徴としてもつものの具体的現象として名指されるマゾヒズムとサディズムについて論じた。さらに、この論文は、2本目の論文である「The Class Struggle and Sadism-- the Thoughts of Gilles Deleuze and Georges Bataille」(『ドゥルーズ哲学思想研究報告書』に掲載)で論じたサディズムの問題と接続された。
国際学会『The 2nd International Deleuze Studies in Asia』で、「The Class Struggle and Sadism-- the Thoughts of Gilles Deleuze and Georges Bataille」を発表した。本学会は、ドゥルーズ研究者も多く参加し、バタイユとは違った視点から暴力性について有意義な討議を行うことができた。さらに、国内学会では『応用哲学会』で「ジョルジュ・バタイユの生命観とその萌芽」、『クィア学会』で「性行為の場における死という否定性――ベルサーニとバタイユの接続」を口頭発表した。公刊を見通した博士論文執筆のための2つのテーマで発表ができ、着実な研究成果を提出することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際学会を含む3度の学会発表では、他の研究者との質疑応答をとおし、良い評価をもらっている。査読論文・外国語で執筆した論文を含む2本の論文を提出することができた。さらに、バタイユ思想研究のための文献精読と、それを研究成果として発表する態度に、本研究課題が順調に進展していると言うことができる。 本研究の目的として、共同体の理論的解明というものがあるが、共同体理論の構築のために大事な概念としてサディズムとマゾヒズムに注目し、その検討を発展させることができた。サディズムとマゾヒズムは、一般的には心的機構とかんがえられるが、現在までの研究においては、サディズムとマゾヒズムの語源を探る歴史的検討や、特に現代思想の分野での当概念の再考などがある。本研究においては、先行研究の批判的・比較検討などを行い、多角的に研究を進めてきた。 以上の点から、本研究課題について、現在まで研究がおおむね順調に進展しているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は、本研究課題を遂行する最後の年である。したがって、今後はまず、現在までの2年のあいだにおこなった研究成果をまとめる作業をはじめる。これにより、親密性と暴力が共存する共同体を理論的に説明することの筋道をたてる。 研究成果の整理をもとに、公刊を目指した著作の執筆計画をたてる。いくつかの執筆済論文の修正加筆と、必要な分の追加の論文執筆をおこなう。予定として、今年度査読論文を3本執筆し、掲載を目指す。3本のうち、1本は、具体的に、バタイユの共同体思想を先行研究した複数の検討を比較し、問題点を整理する論文を執筆する。また、本研究課題が完成した際生じてくる問題点や課題点を見とおして、理論的に説明した共同体論が、現実に存在する暴力をはらむ共同体とのあいだでどういった矛盾をきたすかについて検討する論文を1本執筆する。 研究成果をまとめることを第一目的とし、まとめたものとして著作の公刊をめざす。そのため、口頭発表の機会をおさえ、文章の執筆に研究の時間を充てる予定である。
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