2012 Fiscal Year Annual Research Report
記憶検索の認知過程と神経基盤の解明に向けた統合的研究-実験手法の開発による再検証
Project/Area Number |
12J02809
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
分部 利紘 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | エピソード記憶 / 記憶検索 |
Research Abstract |
「自分がいつ・どこで・何を体験したか」という情報(エピソード記憶)は、環境への適応からアイデンティティに至るまで、実に多くの点で我々を支えている。このような重要性から、「ヒトはどのようにしてエピソード記憶を思い出しているのか」という問題(記憶検索の機序)は、心理学や神経科学の中心的な研究課題の一つとなってきた。平成24年度は、「エピソード記憶の検索を行った後の神経活動」に焦点を当て、実験を行った。その際、従来の研究手法の欠点を克服するための措置を講じた。従来のエピソード記憶の研究では主に機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)が使用されてきたが、fMRIは計測のノイズが極めて大きい。そのため、本研究の対象である記憶検索を行った後の神経活動に関してfMRIによって調べることはほぼ不可能である。一方で難治性てんかんの焦点同定に用いられる深部電極から得られる皮質脳波は、研究協力者を得る機会が限られるという欠点はあるものの、記憶の座である海馬の神経活動を直接的かつ低ノイズで計測することが可能となる。 以上のことから平成24年度は、東京大学医学部附属病院脳神経外科機能グループ(川合謙介准教授)との共同研究体制を整えた後に、2名の難治性てんかん患者に協力をお願いして研究を行った。その結果、1名の患者から記憶検索を行った後に数十秒間もの間継続する、持続的な神経活動が観察された。現在は本結果の解析を継続している段階であるが、平成25年度も引き続き、本問題について検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は交付申請書に基づき、記憶検索後の神経活動を計測するための研究を行った。当初の予定では平成25年度に深部電極および硬膜下留置電極を用いた皮質脳波の計測を行う計画であったが、予想よりも早く附属病院との連携が確立されたため予定を前倒しし、平成24年度より本計測を開始した。一方で、研究への協力をお願いできる患者の方が少ないという問題にも直面した。以上のことから総合すると「当初の予定通りに進展している」と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように皮質脳波を用いた手法では実験の進展が滞ることが予想される。そこで平成25年度は、平成24年度に観察された神経活動を模した形で、健常者の脳を刺激する実験も並行して行う。
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Research Products
(2 results)