2013 Fiscal Year Annual Research Report
記憶検索の認知過程と神経基盤の解明に向けた統合的研究-実験手法の開発による再検証
Project/Area Number |
12J02809
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
分部 利紘 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | エピソード記憶 / 記憶検索 |
Research Abstract |
記憶表象は、当該の情報の読み出し(検索)を行うことで壊れやすくなる。検索により記憶表象が変化する本現象は"再固定化"と呼ばれ、現在まで膨大な研究が行われてきた。しかし検索による記憶表象の変化には、記憶表象が壊れやすくなるという形態だけではなく、「思い出せなかった情報が検索を止めた後で思い出せるように変化する」という形態も存在する。この"記憶亢進"と呼ばれる現象は、記憶検索を中断した後も検索を担う神経活動が持続している可能性を示唆しており、記憶機能とその神経基盤を解明するうえで極めて重要なものである。 平成25年度は、記憶亢進を検討する上で最適な実験手続を検討した。行動実験を行ったところ、記憶亢進が生じるためには、検索を中断させるために無関係な妨害課題を挿入するだけでなく、その際に背景等の視覚的文脈が変化する必要があることなどが示唆された。これらの知見は、記憶亢進およびその背後にある神経活動を計測するために最適な実験手続を確立するうえで有益なだけでなく、検索後の自発的神経活動が生じるための要件を示すものであり、学術的意義が高い。 また平成25年度は、fMRIを用いて計測するための手続を考案した。昨年度までは、fMRIはノイズ比が高いため他の課題を遂行している最中の海馬の活動を計測することは難しいと考え、ノイズに強い皮質脳波(ECoG)を選択した。しかしECoGは、脳全体を計測することが難しいうえ、てんかん患者の協力が必要であるため実験が進捗しにくい。これらの問題に対処するために平成25年度は、"Multi-Voxel Pattern Analysis"と呼ばれる方法を援用するための実験手法を考案した。本手法は、fMRIのノイズ比の高さを克服するとともに、脳全体の活動を計測し、さらにはECoG研究の進展の遅さを補填することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、本年度は交付申請書に基づき、記憶亢進について検討するための実験手続きの確立に取り組んだ。また、機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)による脳活動計測の手法の開発を行った。一方で、様々な都合から皮質脳波(ECoG)を用いた研究は一例に留まり、期待したほどの進展はなかった。以上を総括すると「順調に進展している」と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
皮質脳波(ECoG)研究はてんかん患者に協力をお願いすることになるため、多くの不確定要素が混入する。そこで平成26年度はより着実に研究が進展するように、平成25年度に開発したfMRIを用いた脳活動計測手法をもとに研究を並行して行い、ECoG研究の進展を補う。
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Research Products
(3 results)