2012 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫による寄主植物操作メカニズムの解明に関する研究
Project/Area Number |
12J02812
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
神代 瞬 鹿児島大学, 大学院・連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ゴール(虫こぶ) / 寄主植物操作 / フタテンチビヨコバイ / イネ科作物 |
Research Abstract |
ゴール形成性昆虫であるフタテンチビョコバイとその寄主植物であるイネ科作物を用いた系を構築し、昆虫のもつ寄主植物を物理的・生理的に改変する能力の解明を試みた。初年度であるH24年度は2種類のアプローチにより実験を進めた。1点目として、様々なイネ系統をヨコバイに加害させて症状の比較を行った。その結果、ゴール形成の程度はイネ系統毎に異なることが判明した。さらに、放飼密度、時間を異にした実験を行ったところ、系統ARC10313と台中65号との間にはっきりとした症状の差を検出できた。これらの系統を用いた染色体部分置換系統が数多く作出されており、遺伝子構成がやや異なるこれらの系統への加害実験を行うことで、ゴール形成時に発現する遺伝子を探索してゆく。 2点目の研究として、フタテンチビョコバイ自身のゴール形成性の差異(地理的変異)を探索した。近年の調査から、本種は九州地方だけでなく四国地方にも分布していることが明らかになった。同地域でも草丈の萎縮を伴うゴール形成能力を有しているかを調査するため加害実験を行った。その結果、四国産(高知県)の個体群は九州産(熊本県)のものより有意にゴール形成能力が低かった。また、九州の5地点において本ヨコバイの採集・累代飼育を行い、同様の実験を行ったところ、統計的な有意差は検出されなかったが、四国に隣接する宮崎県でやや低い傾向があった。これらのデータを踏まえ、非ゴール形成(あるいはゴール形成能力の低い)本種の探索・選抜を行うことができれば、ゴール形成起因物質の比較や特定への足掛かりとなる。2年目はこれらの結果を考慮し、ゴール形成性解明に向けた本格的な研究に従事してゆく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゴール形成のメカニズム解明に向けて、基礎となる研究を遂行できたため。とくにゴール形成性に地理的系統間差があることは、今後の評価実験や遺伝子の応答、起因物質の特定を試みる際に大変有用な知見となり得る。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度に得られたデータを踏まえ、 (1)ゴール形成程度の低い個体群を探索・選抜する。 (2)候補となるイネ遺伝資源に対する加害実験から、ゴール形成時に応答する遺伝子の特定を試みる。 (3)唾液腺の解剖学的分離や人工餌を介した採取により、ゴール形成の原因物質をと探索する。
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Research Products
(6 results)