2012 Fiscal Year Annual Research Report
Rad54Bを介した細胞機能ネットワークの解析によるがん治療抵抗性の解明
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12J02829
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安原 崇哲 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Rad54B / 細胞機能ネットワーク / がん治療抵抗性 / LNX1 / Numb |
Research Abstract |
発がんや放射線、薬剤などのがん治療に対する抵抗性の機序を考える上でDNA修復機構の理解は必須である。我々はDNA修復に関係する分子の中でも特にRad54Bという分子に注目しており、これまでのデータから、Rad54Bは複数のシステムの分子と連携しながら細胞機能ネットワークを形成し、互いの機能を調整する役割を果たしているという仮説を立てた。 Rad54Eと相互作用するタンパク質のうち、Numbを基質とするE3ユビキチンリガーゼであるLNX1に注目し、この相互作用が細胞機能に及ぼす影響について詳しく解析を進めた。まず相互作用の結合ドメインを決定した。Rad54BのSWI2/SNF2 helicase domainの前半部分が、LNX1との相互作用に必要十分であった。この部位はRad54BのATP分解酵素活性に寄与しているが、酵素活性にはSWI2/SNF2 domainの後半部分も必要であるため、タンパクとの相互作用は酵素活性とは独立した機能であることが示唆された。一方、Rad54BはLNX1のNumbの結合が報告されている部分と相互作用することが判明した。続いて、recombinantのタンパクを大腸菌から精製し、pull-down assayを行ったところ、Rad54BとLNX1は直接的に相互作用することがわかった。次に、Rad54Bをノックダウンすると、複数の種類の培養細胞において、LNX1のターゲットであるNumbの発現量が上昇することから、Rad54BはLNX1の酵素活性を促進していることが示唆された。Numbの発現量が上昇すると、Numbの標的であるNotchシグナリングの活性が抑制されることが予想されるが、Rad54Bノックアウト細胞においてNotchシグナリングの活性を調べると、野生型細胞に比べて抑制されていることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、recombinantタンパク質の精製や、in vitroでのpull-down assayなどの実験系を新たに導入することで、DNA修復関連タンパク質として同定されたRad54Bが、修復以外の細胞機能において役割を果たすタンパク質LNX1との相互作用を介して、細胞機能の調節に関与していることを示唆する結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
LNX1との相互作用を解析する上での問題点は、現在の大腸がんなどのヒト培養細胞系では、Notchの活性はそれほど高くないことが予想されることである。従って、NotchシグナリングおよびNumbの役割が最も研究されている神経細胞の発生系においての評価が今後必要であると考えられる。まずその前段階としてNotchの活性が高い培養細胞系において、Rad54B-LNX1の相互作用の阻害がNotchシグナリングに及ぼす影響を明らかにする予定である。
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Research Products
(2 results)