2013 Fiscal Year Annual Research Report
Rad54Bを介した細胞機能ネットワークの解析によるがん治療抵抗性の解明
Project/Area Number |
12J02829
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安原 崇哲 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DCl)
|
Keywords | Rad54B / 細胞機能ネットワーク / がん治療抵抗性 / p53 / MDM2 / MDMX |
Research Abstract |
発がんや放射線、薬剤などのがん治療に対する抵抗性の機序を考える上でDNA損傷応答の理解は必須であり、我々は相同組換え修復に関係する分子の中でも特にRad54Bに注目している。これまで得られたデータから、Rad54Bは複数の細胞機能システムの分子とネットワークを形成し、互いの機能を調整する役割を果たしていることが示唆されている。 我々は、Rad54Bがp53のレベルを低下させることを見出した。さらにそのメカニズムとして、Rad54BはMDM2およびMDMXと相互作用し、MDM2-MDMXヘテロ二量体形成の促進を介してp53のユビキチン化を促進していることを発見した。複合体の形成過程の解析により、Rad54B-MDM2複合体にMDMXがリクルートされていることが示唆され、Rad54BはMDM2-MDMXヘテロ二量体形成の足場として働いていると考えられた。 このRad54Bによるp53制御機構が細胞に及ぼす影響を評価するため、DNA損傷応答の変化について検討した。Rad54Bをノックアウトした大腸がん細胞に、大腸がんの代表的な治療薬であるオキサリプラチンを投与したところ、野生型に比べて感受性を示した。Rad54Bノックアウト細胞では定常状態のみならず、オキサリプラチン処理後もp53のレベルが亢進しており、p53依存的なアポトーシスの増加が想定されたが、実際にはアポトーシスは減少していた。 オキサリプラチン処理後一週間のRad54Bノックアウト細胞では、細胞周期の停止を示唆するような細胞形態を示す割合が増加していた。さらに、処理後数日間の細胞周期の解析においても、Rad54Bノックアウト細胞ではG1/SおよびG2/Mにおいて細胞周期が停止する割合が顕著に高かった。つまり、Rad54Bノックアウト細胞ではp53の増加によりDNA損傷チェックポイントの解除がなされないことで、細胞周期の進行に伴うアポトーシスは避けられるが、最終的に増殖可能な細胞の割合は低下していると考えられた。このように、Rad54BはMDM2-MDMXヘテロ二量体を介してp53の量を調整することで、DNA損傷後の細胞運命を決定づけていることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Rad54Bの相互作用タンパク質として、前年度はLNX1について解析したが、それに加え今年度はMDM2とMDMXの二つを同定し、解析した。これらの相互作用のネットワークが薬剤処理後の細胞運命の決定に寄与しているという証拠を得たことで、治療抵抗性をもたらす新しい機序を提唱するという当初の目的に大きく近づいたと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後Rad54Bを介したDNA損傷チェックポイントの乗り越えによって、どのようなゲノム不安定性が生じるかについて解析し、それらがDNA損傷の種類によって変化し得るかどうかを明らかにする。また引き続きLNX1や他の相互作用するタンパク質についても解析を続け、それらの相互関係を明らかにすることで、Rad54Bを中心とした細胞機能ネットワークが、がん治療抵抗性において果たす役割を詳らかにしていく予定である。
|
Research Products
(2 results)