2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J02838
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
掛川 貴弘 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 再生医療 / 電気化学 / 自己組織化ペプチド / 細胞脱離 |
Research Abstract |
本研究は、電気化学的手法を用いた再生医療技術の確立を目指すものである。 この手法は、金-チオール結合を利用して金電極表面に密なオリゴペプチド単分子膜を形成し、これを介して接着させた細胞を、金-チオール結合を電気的に切断することで、分子層と共に脱離させるものである。昨年度までに2分間の細胞脱離を実現してきたが、一方で、実はオリゴペプチド分子のみであれば数秒で脱離することが電気化学的な解析によりすでに分かっている。すなわち、原理的には細胞も秒単位で脱離できる可能性が残されている。そこで、オリゴペプチドの設計、および使用する金表面の設計を工夫することで、より素早い細胞脱離技術の確立に取り組んだ。 オリゴペプチドのみの場合に比べて、細胞を脱離する際により長い時間を要する原因の1つとして、タンパク質の非特異吸着の存在が考えられる。そこでまず、タンパク質の非特異吸着を抑制できるペプチド設計に取り組んだ。具体的には、自己組織化オリゴペプチドを4つのセグメントに分けてデザインし、その一つのセグメントにタンパク吸着を抑制する役割を担うよう設計した。すなわち、オリゴペプチドは、アンカー(C)、リンカー(GGG、PPP、FFF等)、自己組織化に関わる両性イオン部分(KEKE、KEKEKE等)、細胞接着配列(RGD)から構成される。 まず、分子動力学計算により、リンカー、両性イオン配列の80種類の組み合わせに関して二次構造を計算した。この結果に基づき実際にペプチドを合成し、実験的に評価を行った。 その結果、選択した全てのペプチドが金表面上で密な層を形成することが示された。更に、CPPPKEKEKEKEKのみが安定な二次構造を形成し、このペプチドを修飾した表面ではその他のペプチド修飾表面、もしくは未修飾表面と比較して、フィブリノーゲンの吸着も大幅に抑制されることが示された。更に、末端に細胞接着配列RGDを加えることで、2分間での細胞脱離が可能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度までに、タンパク質の非特異吸着を極端に抑制可能な自己組織化ペプチドを設計し、この電気化学的脱離によって2分間での細胞脱離に成功した。 更に、ペプチド配列のみではなく基板表面の凹凸構造も加えることで更なる脱離時間の短縮が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞脱離が遅延するもう一つの要因として、細胞自身による電気的抵抗が考えられる。これまでに、金-チオレート結合の還元脱離に-0.85V(vs. Ag/AgCl)の電位印加が必要であることを実験的に明らかにしているが、細胞のような巨大な物体が接着していると、電極全体への均一な電位印加が妨げられる可能性がある。この予測は、細胞脱離の際に、細胞が周辺部から徐々に脱離するという顕微鏡観察結果に基づくものである。そこで、マイクロ/ナノピラー構造を有する培養基板を作製し、細胞周囲からのイオン流入を促進する工夫を施す。これら2つの工夫により、1分以内での細胞脱離技術の確立を目指す。現在、マイクロ・ナノピラー構造を有する培養基板上において細胞接着性や増殖、形態の違い、更に細胞脱離への影響を評価中であり、CPPPKEKEKEKEKGRGDSPを修飾した基板において良好な結果を得つつある。
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Research Products
(5 results)