2012 Fiscal Year Annual Research Report
金属埋め込み構造を用いた量子ドットからの高効率キュビット生成に関する研究
Project/Area Number |
12J02857
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中島 秀朗 北海道大学, 大学院・情報科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 量子ドット / 単一光子 / 量子情報 / ナノデバイス |
Research Abstract |
半導体量子ドット(QD)は確定的な単一光子発生が可能な非古典光源であり、その発生光子を情報のキャリア(キュビット)として利用することで、高い秘匿性を持つ量子暗号通信への応用が大いに期待されている。その実現には高効率なキュビット生成が必須であるが、研究代表者はQDを金属反射鏡で埋め込む新規構造を提案し、検討を行っている。今年度はこの構造を用いて(1)世界最高レベルの高純度な単一光子発生、(2)QDと外部光学系との結合効率の大幅な改善が確認された。 (1)高純度な単一光子を発生させるため、励起レーザ光の波長を的確に制御し、QD内で形成される1つの励起子状態を排他的に生成させ、発生光子の評価を行った。単一光子の純度は2次相関関数を測定し評価されるが、測定結果は従来の評価手法が適用できない特性を示した。そこでQD内のキャリア分布挙動を2次相関関数に取り込むことで、理論の再構築を行った。これは従来の評価手法では適用外であった状況も網羅した、より一般的な評価手法であり、学術的意義も大きい。更にこの手法を用いて測定結果を評価したところ、複数光子発生が古典光よりも11333に抑制されていることが精度良く確認された[1]。これはこれまでの報告例の中で最小レベルであり、非常に高純度な単一光子発生である。 (2)通常、半導体と空気との屈折率差により、QDと外部光学系との結合効率は~1%に留まってしまうが、独自の金属埋め込み構造を用いることで~8%まで改善することが可能である[2]。今年度は高い屈折率を持つ銀の使用、金属反射鏡の角度の最適化を行うことで更なる改善を目指した。結果として、結合効率18%~24%と大幅な改善が確認された(論文投稿中)。 以上の成果は、QDと金属埋め込み構造を組み合わせることで高純度・高効率な単一光子発生が可能であることを示唆しており、量子暗号通信への応用へ向け重要な結果である。 [1]H. Nakajima et al., APL101, 161107, (2012). [2]H. Nakajima et al, pss(c)8, 337(2011).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績で述べたとおり、金属埋め込み構造QDを用いて世界最高レベルの高純度単一光子発生を観測したこと、外部との結合効率の大幅な改善に成功したことにより、おおむね順調に進展していると考える。尚、QD発生光子からキュビット変換に必要な偏光状態についての調査は現在検討を進めている最中であり、次年度も継続して検討を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度であるため、これまでの研究成果をさらに発展させて、研究課題の取り纏めを行う。具体的にはQD発生光子の繰り返し周波数、偏光状態といった駆動条件について調査を行い、金属埋め込み構造QDからの高効率キュビット生成について調査する。その後、実際に金属埋め込み構造QDを用いた量子暗号通信の試行実験を行い、その有用性について実証する。
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Research Products
(4 results)