2012 Fiscal Year Annual Research Report
巫者を中心とした宗教体験の語りに見る日本人の宗教観の歴史的変遷と現代的特徴
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12J02858
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
村上 晶 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 巫者 / 巫俗 / シャーマニズム / イタコ / カミサマ / 現代宗教 |
Research Abstract |
体研究はシャーマニズム研究と現代宗教論という、これまで2つの異なるとされてきた分野を、宗教的体験の語りを焦点化することで統合し、新たな視座を構築していこうとするものである。本年度の成果は以下の通りである。 まず、本年度は巫俗の実状を把握するために恐山(青森県むつ市)の大祭や巫者が多く輩出されることで知られる弘前市周辺地域でのフィールド調査を行った。巫者やクライアントへのインタビュー、巫者に対して資格を与えていた仏教寺院に対する調査や各種文献の検証を通して、同地域の巫者の代表格として知られてきたイタコの減少とそれを補う形での他のタイプの巫者(カミサマと呼ばれる)の台頭という現実、また、その具体相を明らかにした。さらに、都内からの「イタコの口寄せツアー」という非常に現代的な事例と、弘前市周辺で盛んに行われている巫者を招いての「村祈祷」という「伝統的」事例の双方に対する参与観察を行い、巫者と他者(共同体や顧客)との関係性について、実践共同体の有無という視点から分析するための資料を得た。 地域に寄り添いながら巫俗を受け継ぐ事例のみならず、教祖の神がかりから一大教団へと発展した天理教や、「イタコ」を自称して各種メディアを通して全国に発信していく新しいタイプの巫者など、巫者的な存在を幅広く捉えて比較を行うことによって、宗教的体験の語りを核にして構成される巫者「的」アイデンティティの多様さとその存続のための条件について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現地調査を通しての資料収集が予想以上の成果をあげ、(1)既成の宗教教団と巫者、また(2)地域社会と巫者という巫者を取り巻く重層的な関係性についての資料(フィールドノートや映像記録)を得ることができた。次年度の研究のさらなる発展向けて、十分な基礎となる資料である。また研究成果も、論文執筆や学会発表を通して広く国際的に発信することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は長期の調査を行うことによって、巫者はもとより集落や寺院についてのより詳細なデータを収集する。 理論面への考察も深めるため、宗教社会学の現代宗教に関する諸理論のみならず、人類学で近年盛んに展開されている近代と呪術の関係についての議論を参照する。研究を遂行する上での問題点として、天候の乱れ(降雪)によって冬期は調査が予定通り実施できないことが考えられる。この点に関しては、夏期に行う調査の際に冬場の行事についても聞き込みを行うことによって、またインフォーマントとの緊密な関係づくりを通して、冬期の調査の円滑な遂行、もしくは実施できなかった場合でも情報収集ができるルートの構築を事前に達成しておく。
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Research Products
(4 results)