2014 Fiscal Year Annual Research Report
11世紀ビザンティン修道院の写本制作と都市における機能
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12J02899
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
辻 絵理子 一橋大学, 経済学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ビザンティン美術史 / 写本挿絵 / ストゥディオス修道院 / 聖堂装飾 / 西洋中世美術 / 余白詩篇 / キリスト教図像学 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度にあたり、3年間の成果を発表するため口頭発表ではなく論文執筆に力を入れた。まず、詩篇第40篇に挿絵を施した写本群を比較検討する論文を『Waseda Rilas Journal』に発表した。解り易い箇所を取り上げて特徴を明らかにし、研究史全体を視野に入れつつ小さな差異から窺えるビザンティン写本制作活動の一端を示した。また論文「陽の昇るところから沈むところまで―ビザンティン余白詩篇第49(50)篇の重層的構造」が『パトリスティカ』に掲載された。同誌は神学・思想系研究者に広く知られる、伝統ある学術誌である。七十人訳のギリシア語章句をひとつずつ検討し、詩篇第49篇に描かれた挿絵が他の典拠と結びついて複雑な機能を有するに至った過程を解き明かした。 知泉書館刊の単行本には「『トラディティオ・レギス』図とCod. Vat. gr. 342のヘッドピース」を寄稿した。本年4月に開催された日本ビザンツ学会(京都、佛教大学)で発表した内容を発展させ(詳細は昨年度の成果報告に記載)「貴族詩篇」挿絵のひとつが、欧州の東西を結び得る図像であることを明らかにした。 加えて「ヨーロッパの中世美術論集」シリーズ『聖堂の小宇宙』に論文2本を寄稿した。ひとつはテサロニキの聖ニコラオス・オルファノス聖堂のプログラムを論じ、寄進者を同定した。もうひとつは一般も対象とする書籍において初めて、余白詩篇写本に焦点を当てた章となった。聖堂装飾に関しては書籍も市民向け講座も存在するが、余白詩篇写本については、一般に論じられることは殆ど皆無であった。 科研調査ではウィーン、オーストリア国立図書館で、Theol. gr. 336、Theol. gr. 154をはじめとする写本資料を閲覧、複写し、関連資料を精査した。これまでの研究成果の発表と、この先の研究に繋げ得る調査の双方を達成できた一年間であったと言えよう。
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Research Progress Status |
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(5 results)