2012 Fiscal Year Annual Research Report
言語的マイノリティの学習者の発達促進に向けた学習環境のデザイン-日加比較研究-
Project/Area Number |
12J02927
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
竹内 身和 立教大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 国際比較研究 / 多言語状況 / 第二言語学習 / 数学学習 / 参与観察 / インタビュー / ワークショップ |
Research Abstract |
本年度は、日本とカナダという異なる社会歴史的文脈とその学校内外でのリテラシー・数的リテラシー実践を比較する理論的視座の検討とカナダでの予備調査、及び、多言語状況の進む日本の各地域での調査を進めた。成果の一部を、国内外の学会で発表すると伴に、査読付き国際雑誌の論文に纏め投稿した。特に中心的な研究として、日本の都市部における、「外国にルーツをもつ子どもたち」の数的概念と言語の発達・学習状況の調査を進めた。調査対象地域では、国際結婚等による、フィリピンからの移民、および長期滞在者が増加傾向にあり、その子どもたちの学校での学習支援が課題とされていたため、フィリピンにルーツのある学齢期の子どもとその親を対象にインタビュー調査、および介入的ワークショップを行った。インタビュー調査では、過去と将来展望へのナラティブ、家庭での数的実践、家庭での言語実践についてのデータを得た。結果、1.言語と数的知識に関わる学校実践と家庭での実践の連続性と非連続性、2.言語の価値づけとジェンダーの役割、3.言語と数的知識に関わる家庭での継承の3点が主に検討された。また、インタビュー参加者に対して、介入的ワークショップを行い、ビデオとフィールドノーツによる記録を行った。ワークショップでは、日本で育児をする移民の母親が自らの経験を共有し、自らの知識と言語的資源を再評価する機会の創造が目指された。ワークショップのデータから、参加者間の支援コミュニティ形成の動機や参加者の家庭教育での役割認識の変化が検討された。近年、多言語状況の進む北米では、言語的マイノリティの家庭での学習資源の見直しや親の学校参加の効果が検討されてきたが、本研究の成果は、日本の「外国にルーツをもつ子どもたち」の学校外での学習資源や親の役割の教育学的観点・教育心理学的観点からの検討にとって有意義である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の枠組みに基づき、日本とカナダという異なる社会歴史的文脈とその学校内外でのリテラシー・数的リテラシー実践を比較する理論的視座の検討とカナダでの予備調査、及び、多言語状況の進む日本の各地域での調査を進めることができた。国際雑誌の論文投稿を進めたが、査読審査に予想以上の時間を要し、今年度の論文発表に遅滞が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、本年度得られたデータの分析を精緻化させ、学会発表と論文執筆を進める。また、カナダの多言語状況にある地域と学校におけるインタビュー調査と参与観察を進める予定である。日本の多言語状況にある学校調査も来年度以降、並行して進めていきたい。本研究では、研究調査地域の状況や参加者の状況に鑑み、研究者として参与する実践から得られる知見を最大化するために質的研究手法を用いた。本年度、当初の研究計画では構想にありつつも、必ずしも重点が置かれていなかった、親の学習参与に関する調査を中心的に進めることができたのは、この手法の利点であると考える。
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Research Products
(4 results)