2012 Fiscal Year Annual Research Report
結婚移民からみるアジアにおけるもう一つの近代とそのゆくえ
Project/Area Number |
12J02948
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
カク 洪芳 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 国際結婚 / 移民理論 |
Research Abstract |
1.国際結婚する男性側の結婚動機の究明 東アジアの国際結婚に関する先行研究では移動する女性側の動機や生活上の問題などが主に研究されてきた。だが、この国際結婚を理解する上で男性側の状況の究明も必要だと考え、筆者はいままで中国人と結婚した日本男性・ベトナム人との結婚を考える中国人男性へのインタビューデータを整理し、男性側の結婚動機について分析を試みた。それぞれの国における配偶者選択の法則及び配偶者選択基準の歴史的変遷の視点から、男性側の結婚希望時に直面する問題を明らかにし、国際結婚する動機を分析した。 2.連鎖的国際結婚の現状及び形成要因の究明 筆者は調査地で連鎖的な国際結婚の状況を発見した。2012年夏にそれを深く調査することにした。筆者は調査対象とその家族たちと毎日のように一緒にいて、インタビュー及び参与観察を行った。このデータに基づき、国際結婚の新しい発展として、この連鎖的現象の実態及び要因を明らかにした。 3.婚姻媒介型移住システムという理論化 筆者はいままでの調査研究を移民の発生・持続要因という観点から理論化を試みる。具体的には1)中国国内の移民送出コミュニティの比較によって、欧米への送出と東アジアへの送出パターンの違い及びその要因を明らかにする。2)日本国内のブラジル人を初めとする労働移民と中国人を初めとする結婚移民の比較を行う。3)欧米の移民史と東アジアの移民史を概観する。結果として、社会的関係資本やネットワークの存在は移民の発生・持続に影響し、移住システムの形成を可能にる。しかし、どのような移住システムを形成するには、受け入れ国の政策が大きく影響する。それによって、日本におけるブラジル人のような労働媒介型移住、中国の欧米に移民送出するコミュニティのような親族関係媒介移住、及び国際婚姻媒介型移住といういくつかの類型の移住システムが存在することがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は東アジアの結婚移民を各国の現在と歴史的な状況を丁寧に調査整理した上で、比較を行い、移民理論に貢献することである。また、東アジアにおける移民と近代の関係を明らかにすることである。昨年は海外調査及び文献調査の上で、東アジアの結婚移民とほかの移民類型と比較することができ、その理論化によって、移民理論に貢献できる見込みである。これは研究目的の一つを達成するために大きな一歩を踏み込むことができたことになる。そのために、順調に進んでいると自己評価できるのではないかと思う。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の東アジアの結婚移民をもとに理論化することを深めていく一方、東アジア各国の移民と近代の関係を明らかにすることに力を入れていく。そのために、まず、各国の移民史と移民数を把握する。つぎに、これらのデータをもとにグラフを作る。これらのグラフから傾向を見いだす。それから、移民と近代発展のグラフを照らし合わせて、移民と近代の関係に関する仮説を作る。最後に可能な限り実証データで仮説を検証する。
|
Research Products
(4 results)