2013 Fiscal Year Annual Research Report
結婚移民からみるアジアにおけるもう一つの近代とそのゆくえ
Project/Area Number |
12J02948
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
カク 洪芳 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 国際結婚 / 移民理論 |
Research Abstract |
本年度は主に以下三本論文の成果があった。 1. 「見合い結婚から恋愛結婚へ―日中国際結婚が示唆する現実」 (園田茂人編『日中関係史1972-2012 IV民間』p181-204東京大学出版会2014年3月) 本論文は、日中間における国際結婚を歴史的に概観し、類型に分けて形成要因の分析を行い、日中関係への示唆と展望を述べた。 まず、統計から日中国際結婚の状況を見る。つぎに、恋愛結婚と見合い結婚にわけて、形成要因を分析する。最後に、近年見合い結婚の減少を指摘し、経済的要因、日中関係の要因、中国における人口動態の変化、日本に渡るルートの多様化とその理由を分析する。見合い結婚が減るけれど、今後、直接接触することによって、個人と個人の感情を大切にする恋愛結婚が増えていくだろうと展望する。 2. 「東アジアにおける越境結婚の連鎖―送り出し国から受け入れ国に転換しつつある中国の事例を中心に」(『21世紀東アジア社会学』にて投稿受理中) 本論文は、東アジアにおける越境結婚の連鎖を指摘し、連鎖プロセスを「第一の転換」と「第二の転換」にわけ、現在進行中の「第二の転換」の実態およびその形成要因を実証データに基づいて述べた。 「第二の転換」の形成に、既存のトランスナショナル仲介業者のネットワーク、新しいメディアが大きな役割を果たした。また、韓国や台湾で行われてきたベトナムとの結婚が言葉、人のネットワークでの蓄積になり、中国への送り出しを容易にした。 3. 「婚姻媒介移住システム―東アジア間における越境見合い婚の形成」(『ソシオロジ』に投稿予定) 本論文は、東アジアにおける越境見合い婚を先行研究であまり重要視されてこなかったメゾレベルに注目し、中国から日本への結婚移住プロセスの事例を中心に、移住システムはどうなっているのかを明らかにする上で、ほかの送出類型と比較を行い、東アジア間における越境見合い婚の形成要因に関して再検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は東アジアの結婚移民を各国の現在と歴史的な状況を丁寧に調査整理した上で、比較を行い、移民理輪に貢献することである。また、東アジアにおける移民と近代の関係を明らかにすることである。昨年は聞き取り調査及び文献調査とともに、これらの目的に沿った研究成果を論文に少しずつまとめてきた。順調に進んでいると言えようのではないかと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はいままで集めてきたデータをもとに、東アジアのジェンダーと家族について深く研究する。結婚移民は移民である一方、国境を越える家族形成であり、その間に起きるジェンダー関係の再編、家族をめぐる変化を検討する。移民と家族の関係を明らかにし、東アジアにおける親密圏の変化に貢献する。
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