2012 Fiscal Year Annual Research Report
C型肝炎ウイルスに対する新規標的の同定とそれに基づく新規薬剤の開発
Project/Area Number |
12J02962
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
上田 優輝 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | HCVレポーターアッセイ系 / 抗マラリア薬 / 抗HCV活性のメカニズム / 相乗効果 |
Research Abstract |
申請者は研究実施計画に基づき主体的に実験を行い、以下に示す様な研究成果を得た。 (1)Artemisininの構造を基に作られ、臨床試験開始直前の化合物であるN-89とその誘導体であるN-251に非常に高い抗HCV活性が認められることを発見した。抗マラリア薬であるArtemisininに抗HCV活性が認められたので、現在臨床試験前段階であるN-89やその誘導体であるN-251にも抗HCV活性が認められるのではないかと考え、これまでに樹立したアッセイ系を用いて抗HCV活性の評価を行った。その結果、Artemisininを超える非常に高い抗HCV活性が認められた。また、細胞株やHCV株の違いによっても全てのアッセイ系において抗HCV活性が認められた。さらに現在のC型慢性肝炎の標準治療で使われているインターフェロンαやリバビリンと併用実験を行ったところ、相乗効果を示すことが明らかになった。抗HCV活性が現れる時間もインターフェロンαと比べて非常に早く添加後6時間後には抗HCV活性を示すことを明らかにした。 (2)ArtemisininとN-89やN-251の抗HCV活性の作用機序は異なり、酸化ストレスとの関わりが示唆された。抗マラリア薬であるN-89やN-251が非常に高い抗HCV活性を示すことから、その作用機序について解析を行った。当研究室の矢野等の研究(Yano et al., Hepatology, 2009、Yano et al., AAC., 2007)において抗HCV活性を有するシクロスポリンAが酸化ストレスの誘導に関与しており、抗酸化剤であるビタミンEの添加によって、その抗HCV活性がキャンセルされることを明らかにしている。そこで、ビタミンEによってN-89やN-251も抗HCV活性がキャンセルされるかどうかを調べた。その結果、N-89やN-251はビタミンEの添加によってシクロスポリンAと同様に抗HCV活性が完全にキャンセルされた。しかしながら、ArtemisininについてはビタミンEを添加しても抗HCV活性はキャンセルされなかったことから、同じ抗マラリア薬でも作用機序が異なることが示唆された。次年度についてはN-89やN-251の添加によって産生される酸化ストレスがどのようにして抗HCV活性に結びつくのかをさらに研究することによってHCVの新規標的を同定できる可能性がある。 以上の研究成果は、国内の学術集会(上田他、日本肝臓学会等)や国際学会(Ueda et al., HCV2012)において発表し、学術雑誌(Journal of Hepatology)にも投稿予定である。また中国四国ウイルス研究会では口頭発表において優秀演題賞を受賞した。来年度も継続して抗HCV活性を有する化合物(Artemisinin, N-89, N-251)の作用機序の解析を行い、今年度は達成できなかった抗HCV剤評価のための新規アッセイ法(AH1RL)の開発を行うことが必要であると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究において新規抗HCV剤候補が発見された。これらの発見について国内外で成果発表を行った結果、中国四国ウイルス研究会では優秀演題賞を受賞しており、研究に対する評価も高いことが示唆された。またこれらの化合物の作用機序の解析によってHCVに対する新規標的の同定の可能性が高いこともあり、当初の計画以上に進展していると評価している。
|
Strategy for Future Research Activity |
新規抗HCV剤候補を発見したが、その作用機序は不明のままであり、来年度は作用機序の解析が重要であると考えられる。また今年度の目標として新規薬剤アッセイ系の開発を掲げていたが、今年度では完了しなかったため、来年度も継続して実験を行い、より信頼性の高い抗HCV剤評価系を構築を目標とする。
|
Research Products
(6 results)