2012 Fiscal Year Annual Research Report
ヒメツリガネゴケのジテルペン型新奇生長ホルモンの同定と生合成に関する研究
Project/Area Number |
12J03051
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
宮崎 翔 東京農工大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ジベレリン / Physcomitrella patens / Pichia pastoris / CytochromeP450 |
Research Abstract |
本研究はヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)のジテルペン型生長制御物質の生合成経路とその生理機能解明を目的としている。ヒメツリガネゴケは、顕花植物のもつジテルペン型植物ホルモンであるジベレリン類(GA)を生合成していない。しかしゲノムデータベースからGA生合成関連遺伝子ホモログが単離・機能同定され、生合成初期のGGDPからent-カウレンへの変換反応は多機能型環化酵素(PpCPS/KS)が触媒していること、PpCPS/KS欠損変異体では原糸体成長に異常が見られること、ent-カウレン酸まで顕花植物と同様な経路を持つことを報告している。ent-カウレン酸以降コケ特有な酵素・経路によりジテルペン型新奇生長制御物質を生合成していることが強く示唆されている。本年度はまず、ent-カウレン酸を基質とする酵素遺伝子の同定を目標とした。生長制御物質の生合成に関わる酵素遺伝子を、ヒメツリガネゴケ野生株とPpCPS/KS欠損変異体のcDNAを用いたトランスクリプトーム解析で絞り込んだところ、候補遺伝子群として考えていたP450酵素ファミリーに属するいくつかの酵素遺伝子を絞り込み、全ての遺伝子をクローニングした。これら全ての遺伝子に関して、Pichia pastorisを用いた異種発現で組換え酵素を調製し、ent-カウレン酸を基質として酵素反応に供したが、GC・MSでの酵素変換生成物の同定は誘導体化や爽雑物の影響等で困難であった。そこで、酵素と基質の結合を分析できる実験系を立ち上げた。すなわち、酵素と基質の結合による酵素の構造変化を吸光度の変化で検出するものである。予備実験からスペクトル変化を観察することに成功した。現在入手が困難な基質化合物であるent-カウレン酸を酵素反応で調製しており、順次候補組換え酵素との結合を解析し、目的の酵素遺伝子をスクリーニングする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代シーケンサによるバイオインフォマティックスの手法と、生化学的および植物分子生理学的な新しい研究手法を取り入れて研究を進めた。ent-カウレン酸を基質とする候補遺伝子も絞りこみつつある。候補遺伝子を決定できれば、その後の研究手法は確立されており、順調に展開できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までにent-カウレン酸を基質とする酵素の候補遺伝子として複数のP450酵素をクローニングし、組換え酵素を調製した。今後は基質化合物とP450酵素の特異的な結合を観察する実験系を確立したので、ent-カウレン酸を基質とする酵素のスクリーニングを行い、生成物の構造決定、生合成酵素欠損株への相補実験、加えて目的酵素遺伝子のノックアウトも行う予定である。
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Research Products
(2 results)