2013 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫脳において闘争による順位形成を調節する生体アミン系の解析
Project/Area Number |
12J03065
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡邊 崇之 北海道大学, 電子科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 遺伝子導入 / 神経遺伝学 / コオロギ / 生体アミン |
Research Abstract |
①コオロギにおける新規遺伝子導入法の確立 組替え酵素(φC31 integrase)を用いた遺伝子導入コオロギ作成法の確立を進めた。昨年度作成した組替え標的部位をもつ遺伝子導入系統を累代飼育し、繁殖力に優れた6系統を選抜した。次に遺伝子導入法の効率の評価を行った。野生型φC31 integraseを用いて遺伝子導入を試みたが、遺伝子導入が成功したコオロギを得ることができなかった。コオロギに最適化したコドン使用頻度を持つφC31 integrase遺伝子を人工合成し、遺伝子導入効率の再評価を行った(現在継続中)。 ②神経遺伝学実験ツールの開発・生体アミン関連遺伝子のプロモーターの単離 神経遺伝学研究には特定の細胞集団や組織において任意の遺伝子を発現させるためのプロモーターが必要となる。今年度はユビキタスなプロモーターであるβ-actin遺伝子のプロモーターを、神経マーカーとしてfound in neurons (fne)遺伝子のプロモーターを単離した。コオロギβ-actin遺伝子がプロモーターを2つ持つことを明らかにし、転写調節領域(~3 kbp)を単離した。fne遺伝子については、この遺伝子の発現を調節する2つのプロモーターに相当するゲノム断片(2~3 kbp)を単離した。コオロギ脳内生体アミン系神経回路網の機能操作のため、合成系酵素のプロモーターについて配列決定を進めている。 ③コオロギ脳生体アミン系神経回路網の神経解剖学的解析 闘争行動を調節する生体アミン・オクトパミンの合成酵素に対する特異的抗体を作成し、免疫組織化学法により抗体の反応性を調査した。その結果、コオロギ脳内オクトパミン作動性神経回路網を標識する抗体を得ることが出来た。現在、細胞体の位置・数や神経投射パターンの解析を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
組替え酵素を利用した遺伝子導入法については今年度中に効率評価までを終わらせる予定であったが, 野生型の組替え酵素遺伝子をもちいて遺伝子導入を試みたところ新規実験手法として十分な導入効率を達成することが出来なかった。この問題を解決するためにコオロギでこれまで同定された遺伝子群よりコオロギのコドン使用頻度を算出し、コドン使用頻度を至適化した組替え酵素遺伝子を人工合成し、再度遺伝子導入実験を試みた。そのため、当初の予定より半年程度の進捗の遅れが発生している。その他の実験については予定どおり進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、最優先課題として前年度に引き続き新規遺伝子導入法の確立をおこなう。さらに神経遺伝学的手法によるコオロギ脳生体アミン系神経回路網の可視化・機能操作をおこなう。これまでにコオロギにおける新規遺伝子導入法の確立について当初予期していなかった問題が生じたが、既に問題解決のための対応は取っている。神経回路網の可視化・機能操作に必要な遺伝学的ツールの作成を終えているため, 遺伝子導入法の確立に関するトラブルシューティングを終え次第、当初の予定通り研究を遂行できると考えている。
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Research Products
(5 results)