Research Abstract |
年度前半は,フィールドにおける地質調査,化石標本の収集,形態データの収集,および博物館における標本観察をおこなってきた.6月にミャンマーのグウェビン地域にて約3週間のフィールド調査を実施した.この調査では,まず化石産地の地質調査をおこない,柱状図を作成して産地間の地質学的な関連性を調べた.小型哺乳類を産出した地点にて堆積物を約500kg採取し,1mm目のふるいを用いて水洗した後,その残留物から小型哺乳類化石の抽出を試みた.その結果,霊長類,薔歯類,兎類を含む合計100点以上の小型哺乳類化石の採取に成功し,これらの同定と形態学的な分析をおこなった.得られた哺乳類化石群集をインド,タイ,中国の哺乳類化石群集と生層序学的に比較した結果,グウェビンから見つかった化石群集は,後期鮮新世または前期更新世の群集であることがわかった.また,化石群集は東南アジアの固有種を多く含んでいたことから,河川などによる地理的障害の影響を受けていたのではないかと考察した.11月にはタイにて1週間の標本調査を実施し,Chavalit博士の化石コレクションを観察した.ウシ科標本については古環境分析に用いるデータとして,歯の咬合面構造の計測をおこなった.これらのデータを用いてメソウェア解析を行った結果,ミャンマー中部は鮮新世前半と後半で古環境が大きく変化していなかった可能性が示唆された.これは南アジアで起きた古環境変化とは異なる結果である.年度後半は,これまで得られたデータを博士学位論文としてまとめた.2013年2月にはミャンマーにて約2週間のフィールド調査,および資料の収集をおこなった.この調査では,標本の追加と再観察を目的とし,学位論文で記述した結果との整合性を検討した.本年度得られた成果は,後述する国際学会および国内学会にてすでに公表されている.また,その内容は現在論文として投稿準備中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画は全て達成した.しかし,本年度の後半はほとんど学位論文をまとめる作業に費やしたため,論文を投稿することができなかった.現在,投稿準備中のものが3点あるので,これらを平成25年度前半中にまとめていく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究で利用する予定だった「X線照射器ノーマッド」について問題が生じた.まず,価格が当初60万とされていたが,80万近くまで値上がりした.また,製造会社によるデモを行ったところ,本研究へ利用する場合,機器だけではなく消耗品としてフィルムおよび現像キットが必要であることがわかった.当初の予定通り60万前後で購入できる場合は研究計画を変更せず実行するが,あまりにも高額な場合は別の機器の購入を検討する.また,年度後半にアメリカへの調査渡航を計画していたが,タイ(コラート化石博物館)へ変更する.ただし,国際古脊椎動物学会(アメリカ11月)は予定どおり参加する.
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