Research Abstract |
本年度は, タイのコラート化石博物館を拠点に, ミャンマーとタイから見つかっている新第三紀哺乳類化石の古生物学的分析を進め, その同定結果をもとに生層序年代と古環境を明らかにした. まず, コラート化石博物館に保管されているミャンマーおよびタイの哺乳類化石標本(3000点以上)を整理し, データベースを再作成した. この中から, 研究材料であるウシ科とキリン科標本を選び出し, その分類学的位置を定めた. また, これらの化石が見つかっている産地を訪ね, 地質調査および追加標本の採取を試みたところ, 新たにゾウやカバ, ウシなど大型哺乳類が見つかった, また, 1月にはミャンマー中部のグウェビン地域で哺乳類化石の発掘調査を行い, コロブス類や研究対象である齧歯類など多くの小型哺乳類化石が見つかったため, これらの記載を進めている. 次に, ミャンマーとタイから見つかっているウシ科化石のうち歯牙標本を対象に, 実体顕微鏡下で咬合面の形態を観察, 計測し, 古環境分析(メソウェア解析とセノグラム解析)および系統解析に必要なデータを取った. 用いた標本は, コラート化石樽物館所蔵のものだけではなく, バンコク在住のC. Vidthayanon博士が個人で所有している標本を使用し, データの信頼性を検証した. 本年度得られた成果は国際古脊椎動物学会(ロサンゼルス), 国際東南アジア古生物学会(マレーシア), 日本哺乳類学会・霊長類学会合同大会(岡山)にて発表した. 論文発表として, ミャンマーの齧歯類化石に関する研究はJournal of Systematic Palaeontologyに採録決定済みである. また, タイのキリン科化石とウシ科化石に関する報告をそれぞれJournal of Science and Technology Mahasarakham University, Journal of Mammalian Evolutionに投稿し, 前者はすでに採録決定済みである.
|
Strategy for Future Research Activity |
問題点として, 非常に小さい齧歯類の歯牙標本をより精密に観察する上で電子顕微鏡の使用が望まれた. しかし, 化石標本を日本へ持ち出すことは難しく, また逆に電子顕微鏡を現地へ持っていくのも現実的ではない. 現状, 電子顕微鏡を所有している現地の研究機関に協力を仰ぐ必要があるため, まずは共同研究の方針を立てる必要がある.
|