2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J03136
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
橋本 周子 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | グリモ / 美食 / フランス革命 / 年鑑 |
Research Abstract |
平成24年度の研究では、グリモ・ド・ラ・レニエールに関する初の包括的研究となることを目的に、研究内容を(1)グリモの「美食文学litterature gourmande」についての分析を中心課題にすえた。 (1)に関しては、これまで忘却されていたグリモのテクストを、18世紀以来の文学傾向や、レチフやメルシエなど同時代の作家との比較を通じて検討し、その特徴と文学的価値を見定めるとの目的を定めた。秋にはパリの国立図書館で当時の「年鑑」と呼ばれる文学ジャンルに属する書物を調査し、従来「フランス初の美食に関する批評的年鑑」であることばかりを強調されてきたグリモの著作に先立つ類似の書物が、すでに18世紀中に存在していたことを明らかにできた。また、グリモの食に関するエクリチュールの特徴として、食の快楽と性的快楽が混淆させることを可能にする点を指摘した。 (2)については、近代民主主義思想や消費社会論との関連を考慮しながら、ナポレオン期以降に始まるフランスの美食産業の飛躍的発展は、輝かしい側面と同時に、卑しい社会的上昇志向を持った人々の競争の産物であることを示すことを目標に掲げた。結果、従来の歴史観では、経済発展が十分に進んだ19世紀末から20世紀以降に関して確認されるとされるいわゆる「大衆消費社会」の原初的形態が早くもフランス革命の混乱が落ち着くや否や生じてきたことを明らかにした。このことはつまり、現在につながるような華々しいフランス美食文化を支えた原動力とは、19世紀初頭の思想家アレクシス・ド・トクヴィルが指摘したような、近代デモクラシー社会特有の人々の競争的情念に他ならなかった、ということを示唆している。 本研究ではさらに、ノルベルト・エリアスの研究を参照しつつ、旧体制のもとで社会的規範としての効力を持った「作法」という概念が、デモクラシー社会の到来とともにどのような変質を被るのかについても考察を与えた。一般には「作法」はもはや「消費」に取って代わられ、その価値をほとんど無にしてしまうとされるが、本研究では食卓作法やワインといった具体的事例をもとに、「作法」の価値は消滅するのではなく、「消費」の対象へと変化するのだと結論した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画に沿って着実に進展することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで遂行した研究内容の精査を続行しつつ、計画通り次の課題に取り組む。
|
Research Products
(2 results)