2012 Fiscal Year Annual Research Report
クメール・クロムのアイデンティティ-生れ故郷のベトナムとルーツとしてのカンボジア
Project/Area Number |
12J03147
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
下條 尚志 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ベトナム / カンボジア / 近代国家形成 / 民族 / 生活危機 / 社会史 / 歴史人類学 |
Research Abstract |
本研究は、ベトナム南部メコンデルタ地域を生まれ故郷としながらも、言語や宗教等をカンボジアの多数派クメールと同じくする人々を対象としている。本研究の目的は、仏領インドシナ連邦が崩壊して以降、新たに誕生したベトナム、カンボジア両国の激変する政治状況が、メコンデルタにおいてカンボジアと関係が深い人々の生活にいかなる変化を迫り、その変化に対して人々がどう対処してきたのかを解明することである。また両国の独立前夜 (1945~1954年)に生じた民族間衝突やベトナムのカンボジア侵攻(1979年)など、民族問題に関わる過去の出来事に、かれらはいかなる影響を受け、現在それらの出来事をどのように解釈しているのかという問題についても検討する。 本年度は、主に一次資料、先行研究の収集と分析に多くの時間を費やした。具体的には、2009年9月~2012年3月まで実施したベトナムでの現地調査で得た口述資料と文献資料を分析し、また京都大学東南アジア研究所に所蔵されているベトナム政府の官報、JETROアジア経済研究所に所蔵されているベトナム語の新聞、計128冊に及ぶ東南アジア近現代社会史に関連する先行研究を新たに集め、解読した。また、2012年7月7日に行われたカンボジア研究会では本研究全体や投稿論文の構想を発表し、出席者から一定の評価を得た。 資料収集・分析に膨大な時間を費やしたため、平成24年度研究実施計画にしたがって計2本の論文を投稿し、冬季休業を利用して現地調査を実施することはできなかった。しかしながら平成24年度末に、本研究全体の構想と投稿予定の論文を指導教官に提出し、平成25年度前期には少なくとも2本の投稿論文を提出できる見込みであり、平成24年度は多くの成果を得られたものと確信している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は文献資料の収集・分析に多くの時間を費やしたため、当初予定していた論文の投稿や現地調査の実施が実現できなかった。しかし、平成24年度末には本研究全体の構想や投稿論文1本の執筆をほぼ完成させ、平成25年度には多くの成果を発表できるものと考えられるため、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、平成25年度4月末には、現在ほぼ完成している論文を研究雑誌に投稿し、また8~9月までに現在取り組んでいるもう1本の論文を完成させ、投稿する。12月には研究成果を東南アジア学会で発表する。さらに2013年1月~3月までに新たな論文を執筆、投稿する。このように平成24年度中に3本の論文を執筆すれば、来年平成26年度の初めには、本研究全体の7割程度を完成させることができる。
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Research Products
(1 results)