2012 Fiscal Year Annual Research Report
反芳香族16πポルフィリンの創製と新規カルベン配位子を用いた遷移金属触媒の開発
Project/Area Number |
12J03161
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
菅原 峻 広島大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ポルフィリン / 反芳香族性 / 一重項カルベン / 遷移金属触媒 |
Research Abstract |
1.反芳香族性16πポルフィリンの単離と性質解明 ポルフィリンは通常18π電子系の共役系をとる芳香族性分子であるが、二電子酸化された16π電子系のポルフィリンは不安定なため単離例が数少なく、構造解析や基礎物性評価についてほとんど知見が得られていない。本研究ではより平面性が高く、より強い反芳香族性を発現する16πポルフィリンの単離と性質解明を目指している。以前に単離に成功していたベンゾ環を有する系については共同研究の結果を昨年度末に論文として発表し、今年度に行われた国際会議(ICPP-7)においてポスター発表を行った。アントラセンで縮環した系については、後輩との共同研究により目的の16πポルフィリンの前駆体までの合成に成功し、電気化学測定によって非常に酸化が容易になっていることを明らかにした。酸化剤を用いた二電子酸化の検討も行っており、紫外可視吸収スペクトルでの変化を確認できたが単離には至っていない。 2.新規なカルベン配位子の開発と遷移金属触媒への応用 NHCなどの安定な一重項カルベンは遷移金属触媒を安定化・活性化する配位子として非常に有用な化学種である。本研究では環状芳香族カルベンにアミノ基を導入した新規カルベン配位子の合成を目標とし、より高活性な遷移金属触媒の開発を目指している。1,8-位が無置換の系について遊離のカルベンの検討を行ったが付加体を生成するのみであった。そこで、酸化的付加を用いたパラジウム錯体の合成を行うことで二価の金属錯体の単離に成功し、その構造と高い触媒能を明らかにした。本結果については、今年度に論文投稿し、国際会議(ICHAC-11)及び国内学会でも発表を行った。次に、ジアゾ化合物を用いた光分解による研究を行い、遊離のカルベンの寿命と光学物性を明らかにした。1,8-位にメチル基を有する系の合成にも成功し、比較する予定である。さらに、多様な誘導体の合成が可能と考えられる1,8-位に臭素を有する系についても前駆体の合成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
16πポルフィリンの研究については目的物の前駆体までの合成に成功し、予備的な検討結果を得られている。また、新規カルベン配位子の研究については無置換の系で配位子としての有効性を評価することができ、さらに汎用性の高い前駆体の合成に成功している。しかし、両テーマともに最終目的物の単離には至っていないためこのような評価となった。
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Strategy for Future Research Activity |
16πボルフィリンの研究については今後二電子酸化の検討を行い、単結晶としての単離を目指す。単離に成功した後は共同研究によりその特異な物性を精査する。また、新規カルベン配位子の研究については、現在ジアゾ化合物の光分解の研究を行っており、遊離のカルベンの寿命や反応性について調べていく。さらに、汎用性の高い1,8-位に臭素原子を有する前駆体の合成に成功したので、速度論的な安定化が期待される嵩高いアリール基を導入して目的の遊離のカルベンの単離を目指す。カルベンを単離した後は、遷移金属触媒の開発や新規な典型元素化合物の合成などに応用していく。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] Synthesis, Chearacterization, and Spectroscopic Analysis of Anti-aromatic 16π Benzofused Metalloporphyrins2012
Author(s)
Shun Sugawara, Satoshi Kojima, Yohsuke Yamamoto, John Mack, Nagao Kobayashi, Zhen Fu, Karl M. Kadish, Young Mo Sung, Kil Suk Kim, Dongho Kim
Organizer
7^<th> International Conference on Porphyrins and Phthalocyanines (ICPP-7)
Place of Presentation
韓国・済州島
Year and Date
2012-07-03
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