2013 Fiscal Year Annual Research Report
反芳香族16πポルフィリンの創製と新規カルベン配位子を用いた遷移金属触媒の開発
Project/Area Number |
12J03161
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
菅原 峻 広島大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ポルフィリン / 反芳香族性 / 一重項カルベン / 遷移金属触媒 |
Research Abstract |
1. 反芳香族性16πポルフィリンの単離と性質解明 18πポルフィリンは芳香族性を示すが、二電子酸化された反芳香族性16πポルフィリンは不安定なため、その構造や性質はほとんど知られていない。本研究では、より平面性が高く、より強い反芳香族性を発現する16πポルフィリンの単離と性質解明を目指している。2つのアントラセンで縮環した系の検討を行い、目的物の前駆体合成に成功したが、構造解析には至っていない。合成の過程で、1つのアントラセンで縮環したポルフィリン骨格の合成にも成功し、単離検討を行っている。一方、meso位フリーのオクタエチルポルフィリンを強力な酸化剤で酸化することで16πポルフィリンを発生し、プロトンNMRスペクトルとUV-visスペクトルでの観測に成功した。NMRでの高磁場シフトからこれまでで最大の反芳香族性を示す事を明らかにした。 2. 新規なカルベン配位子の開発と遷移金属触媒への応用 安定な一重項カルベンは、遷移金属触媒を安定化・活性化する配位子として有用な化学種である。本研究では、環状芳香族カルベンにアミノ基を導入した新規カルベン配位子を合成し、より高活性な遷移金属触媒の開発を目指している。1,8-位が無置換の系での知見を基に、立体保護基として1,8.位にフェニル基を有するカルベン前駆体の合成に成功した。光分解での発生に取り組んだが、低温UV-visスペクトルによる観測には成功したものの、室温での過渡吸収スペクトル測定はフェニル基の光吸収が原因で観測できなかった。一方、酸化的付加でパラジウム錯体を合成すると、14電子配位不飽和なPd錯体の単離に成功した。カルベン配位子を用いた14電子錯体は1例しか報告例がなく、非常に珍しい化学種であることが分かった。一方のフェニル基からのアゴスティック相互作用による安定化を示し、1,8v位の保護基の導入が効果的であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
16πポルフィリンの研究は、酸化検討を行い、現在結晶化を試みている。1つのアントラセンを縮環した骨格の合成にも成功している。また、新規カルベン配位子の研究は、1,8-位にフェニル基を導入した配位子の合成に成功した。光分解での発生は困難であったが、配位不飽和のPd錯体の単離に成功した。両テーマともに最終目的物の単離には至っていないため、このような評価となった。
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Strategy for Future Research Activity |
16πポルフィリンの研究は、一つのアントラセンで縮環した骨格も併せて、二電子酸化の検討を行い、単離を目指す。構造解析に成功した場合、共同研究によりその特異な電子状態を精査する。また、新規カルベン配位子の研究は、小さなカルベン(シクロプロピニリデン〉で安定化することによって、カルベン等価体としての単離を目指す。等価体として単離した後は、遷移金属や典型元素化学種との反応によって、新規錯体の合成を行い、遷移金属触媒の開発や新規な不安定典型元素化合物の安定化などに応用していく。
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Research Products
(2 results)