2013 Fiscal Year Annual Research Report
パイロクロア型イリジウム酸化物における新奇な量子磁性と伝導現象の研究
Project/Area Number |
12J03194
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 洵 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | パロクロア / イリジウム酸化物 / バンドトポロジー / 幾何学フラストレーション / スピンアイス |
Research Abstract |
物性物理において近年トポロジカル絶縁体の理論的予言とそれに引き続く実験による物質系の発見により、バンドトポロジーが物性におよぼす効果がにわかに注目を集めている。その中でも特に、パイロクロア型イリジウム酸化物は現時点で唯一、強い電子相関と非自明なバンドトポロジーを持つと期待される物質系であり、実験的な研究が大いに注目を集めている。今回我々が合成したPr_2Ir_2O_7単結晶はPhilipp Gegenwart教授(Georg-Augst-Universitaet Goettingen)のグループとの共同研究により磁気熱量係数が低温かつゼロ磁場に向かって発散的な振る舞いを示し、ゼロ磁場において量子臨界的振る舞いを示すことが明らかにされた。これらの事実は従来の磁性の枠組みでは理解できず、新たな理論が必要になり、この発見が新たな理論研究の刺激になることが期待される。また、昨年度に我々が発見した、従来とは異なり低温で長距離磁気秩序を示すPr_2Ir_2O_7単結晶は、約1%程度の酸素欠損があることが澤博教授(名古屋大学)との共同研究である放射光X線回折実験により分かりつつある。このことは、わずかな組成ずれによって物性が大きく変化する可能性を示唆しており、パイロクロア型イリジウム酸化物の化学組成への敏感さを示しているものと考えられる。これは近年理論的に予想されているパイロクロア型イリジウム酸化物のゼロギャップ半導体的なバンド構造を考えると自然に理解される。その物性の本質的な理解のために組成を0.1%以下のレベルで制御できる純良単結晶育成法の開発を推進している。また辛教授(物性研究所)との共同研究による光電子分光によって電子状態の理解も進んでいる。今後も純良大型単結晶を用いた低温磁化、比熱、電気伝導度、ホール伝導度測定に加え共同研究を精力的に推進し、強相関トポロジカル相の実験的検証を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Pr_2Ir_2O_7の大型単結晶を用いた磁気熱量効果により自発的な量子臨界性を発見した。また、光電子分光の共同研究により、本物質の電子状態の理解が進展した。また長距離磁気秩序を示すPr_2Ir_2O_7単結晶に関しては極わずかな酸素欠損が物性を大きく変化させている可能性があることが分かりつつあり、このことによってスピン液体相と磁気秩序相との比較研究が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
Pr_2Ir_2O_7純良大型単結晶を用いた詳細な低温物性測定により、スピン液体相および磁気秩序相の相図を作成する。また、磁場および圧力、合金化による化学圧力などの効果をより詳細に研究し、パイロクロア型イリジウム酸化物におけるフラストレート量子磁性相、強相関トポロジカル相における異常伝導などの新奇物性の実証的研究を行い、この系の多角的な理解を深める。
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Research Products
(3 results)